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ブラックボックス:音声分析捜査のSSDDのレビュー・感想・評価

3.8
◼︎概要
ある男は類い稀なる聴覚を持ち日常生活では遮断しないと蝕むほどの感覚の持ち主。航空機関連の事故調査に従事する。
詳細にまでこだわる男は上司から疎まれ、旅客機の墜落の調査の際に初動を別の担当にされたのだが、翌日から上司は行方不明。男が責任者に就くのだが、音声データと様々な状況から差異を感じ違和感を覚える…。

◼︎感想(ネタバレなし)
"身内と仕事しない方がいい"

スリリングで重厚なサスペンス。
華やかで社交性の強い妻と職人気質で細部まで確認しきらないと結論を出せない夫という対比が、やや痛ましいくらいに演出されている。
有能ではあるが意固地で取捨選択ができず協調性のない性格という本作の根幹として必要なのだが重い…。

"疑わしきは罰せず"、"一度吐いた唾は飲み込めない"などどこの世界も同様で一時速報として話した内容が関係各所の予定調和なら、乱さずそのまま結論付けたいという考えに囚われず、自分の正義に従って進むのは素晴らしいのだが…果たしてこの男の妄想なのか、それとも真実を解明できるのか…。

ややパラノイア気味な主人公に没入していくため疲れる作品とは言える。納得のサスペンスと流石おフランスざんすという暗めの作品なので観る時は選ぶと思います。

体調不良で珍しく2連休取って意識何度も飛びながら観るのはやめとけば良かった。











◼︎感想(ネタバレあり)
・主人公の全能性
主人公の有能性や特異性をしっかり提示して、その後失敗をすることで全能性を否定するプロットはなかなか。
これで観ている側には、この主人公は"無敵"ではないのだと理解させられる。

こうなると主人公だけが信じてひたすら進む道が正しい!と信じて観ていられなくなるわけで没入すると主人公と同じように蝕まれて感情が揺さぶられるので素晴らしい作り。

その上でこの映画では失敗を二度と三度と重ねて、主人公の有能性までも破壊しかけるまでしてから最後に疎まれていたと思った上司が、裏切っていたから有能である主人公に困っていたというツイストが決まる。実に巧みな脚本です。
いやしんどいけど…。

・疑わしき登場人物
おフランス映画であることでキャストが見慣れないこともあって、どいつもこいつも胡散臭い。
妻とか裏切ってるんじゃないかと疑わずにいられないんだが…というメリケン映画では予測してしまいがちな敵側を予想できないのも強み。

・総評
せっかく正義を貫き真実を見つけても、事故死なのかというのが悲しい。
あの事故はペガサス社のハッキングなのか、それとも妄想での操作ミスなのか…。

私は前者だと思っていて、途中まで追走していたがハッキングするためのなんらかの準備が完了して追跡をやめて操作したのかと…。ではないとわざわざ家に侵入してきた際に車という逃走手段を使えないようにしない意味がわからないので。

様々な利権と人命の天秤にかけた資本主義のあり方。
将来的な航空関連におけるAI自動化とパイロットの削減は本当に目指すところなのか。など重い社会的命題を提起しながら終わる本作。なかなか悪くなかったです。
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