くまねこ

Firebird ファイアバードのくまねこのレビュー・感想・評価

Firebird ファイアバード(2021年製作の映画)
3.8
「Firebird ファイアバード」エストニア🇪🇪産の映画を、滅多に来ない新宿ピカデリーで鑑賞。LGBTQ+映画だと思ってたら、正統的な恋愛映画だった。

1977年、ソ連占領下のエストニアで若き二等兵のセルゲイ(トム・プライヤー)と、パイロット将校のロマン(オレグ・ザゴロドニー)が出会い、軍隊の中で秘密の愛を育むが、2人の関係を訝しむ上官、密告する同僚らの障壁が彼らに立ちはだかる…。

序盤、仲間たちとの海での素潜りシーンは、エストニア全体に蔓延るソ連および息苦しさの象徴であり印象的。
セルゲイとロマン2人の共通の趣味であるカメラ、写真という設定は、お互いの熱視線、一瞬の愛の記憶と残像を写すツールとして機能していたと思う(写真は後で命取りになりかねないよね…)

彼が愛し合う部屋に、2人の関係を訝しむ上官が訪問するシーンは、バレるかバレないかの緊張感たっぷり…

セルゲイが互いに好意を寄せていた美しき女性ルイーザ(ダイアナ・ポザルスカヤ)から、ロマンとの婚約を知らされ、困惑し瞳を曇らすセルゲイのあの表情が忘れられない…。
自分が愛する男性を、好意をもつ女性に奪われてしまう哀しみ。簡単に言うと複雑な三角関係であり、幸せな結末を想像しづらい…。

3人でクリスマス🎄を祝うシーンは、一瞬の安堵感があり、見ててホッとした。彼らの愛の残火が再燃し始めたのが運の尽きだったのかも…。

身勝手なロマンの振舞いは幸せな結末をもたらさない。ちゃんとセルゲイとお別れをしなかったのがいけない。2人とも未練という名の、愛の残火が燻っていたのがやはり不味かった…。

悲しみのアフガニスタン…失意のセルゲイが可哀想だが、最大の被害者はルイーザかもしれない、彼女はすべてを失ったんだと思う。



本作は2017年に亡くなった無名の兵士、セルゲイ・フェティソフ氏の回顧録を映画化したもの。この作品はエストニアで初めて劇場公開されたLGBTQ+映画であり、大ヒットが後押して2024/1/1にエストニア国会で同性婚を法制化する家族法修正案が採択された意味はとても大きい。

(備忘録)仲間とのパーティシーンで小泉今日子のデビュー曲「私の16歳」が流れて一瞬焦ったが、よく聴いたらボニーMのディスコヒット曲「怪僧ラスプーチン」でした…。
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