Kachi

コーダ あいのうたのKachiのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.5
【音楽映画で初めて聴こえない部分で震えた】

聾唖の家族にいるたった一人の健聴者ルビーが、家族と自己実現との狭間で葛藤する物語。歌がその時々のルビーの感情を代弁し、歌によって導かれるがままに物語は進行する。

秋の音楽祭のシーンは一際印象的だ。二人が歌い出したかと思った刹那、視点がルビーの家族へと転じる。映画館全体が無音に包まれ私たち鑑賞者は、愛娘(or)妹の好演を周囲の反応から読み取っていく。

ああ、この瞬間に家族全員が彼女の才能を認め、背中を押すことを決めたのだと。

そして迎えたバークリー音楽大学のオーディション。彼女は二階席に闖入した家族へ向けて、旅立ちの歌を高らかに歌う。

手話を交えた歌は、これまでの自分を受け入れ、家族に感謝し、好きなことで勝負をしていく決意の歌に他ならず、そのメッセージを受け取った家族はルビーからの「卒業」に向け動き出す。

ハイスクールの卒業・旅立ちのみならず、聾唖家族の自立の物語でもある本作は、文句の付けようのないお手本のような作品であった。
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