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劇場版 呪術廻戦 0のOtoのレビュー・感想・評価

劇場版 呪術廻戦 0(2021年製作の映画)
3.8
医者や刑事がよく「私の夢は自分の仕事が必要のない世界にすること」みたいなことを言うけれど、まさに主人公が仕事を失うまでの物語で、呪われているという弱みが自分の決定的な強みになっているという裏腹な設定の面白さだなと思った。

緒方恵美さんのキャスティングや「死んじゃダメだ」など含めて、確信犯的にシンジくんで、「本人が望まない特殊な力を授けられてしまった」という苦悩。ジャンルで言うと、「難題に直面した平凡な奴」と「スーパーヒーロー」の掛け合わせかな。当時新連載が始まったとき話題になって少し読んでいたけど序盤くらいしか覚えていなくて新鮮にみた。

最後まで「道真の末裔」という”選ばれしもの”だったという残念さはあったけど、ハリーポッターもルークスカイウォーカーも結局は、特別な宿命を背負っていても、人類に共通する普遍的な自己実現という葛藤を持っているし、里香ちゃんにすら自分と似た悩みを見出したりした。

ただ国民的娯楽作品って、MCUも同様にフィクションラインを高めることや多様なキャラでファンサービスを徹底するで、逆に全員が共感できる物語になっているし外さないけど、その分個人的な感動や発見を見出すことが非常に難しくて、「セレンディピティ」みたいなものがない。スパイダーマンにも踏み出せずにいる。

巨大スクリーンで観る意味はすごくあったし、「失礼だな純愛だよ」とか笑ってしまうくらいキザでかっこいいけど、「親友」とか説明してしまうの野暮ったいと感じたし、エヴァのような魂が震える体験にはならなかったなぁと思う。

でも「最後くらい呪いの言葉を吐けよ」から一定の間をおいてのトドメの音には趣があった。親友同士の戦いという意味では『座頭市』の時代から変わっていない。最後のミゲルはアニメの2期で回収されるのだろうか。

プロット分析
・交通事故で失った幼なじみの婚約者・里香の呪いに苦しみ、死を望むが呪術高専に迎え入れられた主人公・乙骨。
・同級生と出会い自らの役割を知ることで、生きてていいという自信を得るため、自らの呪いを解くために、呪術師を目指そうと訓練に勤しむ。
・追放された呪詛師が現れ、呪霊による大虐殺を実行すると宣言するが、実は里香を手に入れるために高専を襲撃する。
・高専に残っていた乙骨は、むしろ自らが里香を呪っていたことに気づき、激戦の末に呪詛師を倒し、里香の解呪に成功する。
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