大評判を聞きつけて観た良作ノワール。期待を超えてよかった。
崖から人を突き落とす男を目撃した３人の少年少女のジュヴナイル。
将来の活躍を感じさせる新しい役者たちの芝居に、サイコパス×三枚目の天才・岡田将生と豪華な脇役陣。脚本も抜け目なくて、そりゃ面白いよなぁとなった。
裏切りが肝な映画なだけに言えないことが多いので以降は観てから読んでいただきたいけど…
純粋に３人を応援して観ているときも、それがひっくり返ってから観ているときも楽しい。前半はちょっと『スタンドバイミー』的でもある。
なんで沖縄なんだろう？と初めこそ思ったけど、単純に画が持つ。バス停を振り返る夏月、ポカリのCMか…？
でもあとから思うと、東グループの恩恵を受けまくってる狭い地域ということに意味があったのだと思うけど、閉塞感・支配感・海に囲まれた底知れなさ、とかいろんなことがマッチしてる。
主演の羽村くんも素晴らしいけど、星乃さんの華がすごい。台詞や言動の切なさが良くて、「女だからやるよ」とかも切なすぎる。「人殺しじゃなかった」ことにあんなに喜んでたからこそ。
映像表現も頑張っていて、最後のドリーショットも奥行きあってよかったし、朝陽に寄っていくときにカメラが揺れる不穏さも意味があった。
殺人後のクラシックはややクリシェすぎるかも、「時計仕掛けのオレンジ」の影響を受けた対位法なんだろうけれど。
賢い快楽犯ってやっぱり面白くなりがちだけど、岡田くんに関しては割としっかり動機が見えるし、もう一人との底知れなさとの対比も良い。
思い返せばおかしな行動は多かったし、どこまでが計画的なのかを考え始めると面白い。少なくとも動画を回したのは意図的。ただ離婚があるとはいえ突然変異であそこまでのサイコパスって生まれるのかなぁ。
黄金期からきているであろうタイトルとテーマも良い。自分も神童を活かせなかった部類に入るから。後半は勝手に脳が微分方程式を解こうとしてしまって、すごくノイズになった…。
ちなみにタイトルは『オールドボーイ』が元かなと思ったら、キングの『ゴールデンボーイ』の方らしい。
黒木華も素晴らしい。あそこで指噛んでるの演出なんだろうか〜。ヨウジ着た岡田くんもかっこよすぎるし。
松井玲奈は昔すごく推してたけど、あの豪華な布陣だとさすがに芝居が浮いて見えた。
結末が結構しっかり閉じたのだけ少し気になる。すべてが描かれた上にほとんどの人が死んでしまったので、もうあの映画の中の時間を生きることができない。
