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女囚701号 さそりのOtoのレビュー・感想・評価

女囚701号 さそり(1972年製作の映画)
3.6
伝説のカルト映画で、タランティーノも惚れたそう。
昔に池田千尋監督に薦められたことがあるけど、ようやく観られた。

●豊かな映像表現

エログロ描写が多い一方で、この時代の邦画はやっぱり映像として豊か。
冒頭から、踏まれる賞状、滴る血の跡、オープニングクレジットからの裸体の整列、服の色分け…すべてが視覚的で、説明的じゃない。

犬蹴ったりごはん投げたりすごく昭和的だけど、床越しの煽り、シーツに包む、回転舞台、色の変わる照明…演劇的ですらある。
下から煽って撮るだけで、これだけ人は高圧的に見せられるんだなぁと教わるような気持ち。

梶さんのアイデアらしいけど、主人公の台詞がほとんどないのも斬新。
視線で全てを語っているし、3年の前後でまるで表情が違うのも凄い。

●ナンセンスなカルト的展開

一方でカルトになっているように、結構ナンセンスな展開や描写が多くて、爆笑してしまう箇所も多い。
例えば、ガラス扉を破ってからの目潰しとかコメディすぎるし、登場テーマ曲も仮面ライダーみたいで異様にダサい。

罠を見破っていたとはいえ、突然の百合描写も驚くし、しかも背景に謎のイビキ?サソリ?のような音がずっと鳴っている。
スローモーションを多用すると、やっぱりなんでやねん!って印象が強まる。死に際のダイイングメッセージもそんなことあるかい!って思った。

野蛮な描写も多めで、女囚たちがリンチを楽しむのは支配側と同類だし、もはや盲目的に従うモブの方が怖かったりする。
立てこもって逆レイプに歓声が上がるのとか、穴に砂をかけ続けるのとか、普通につらいシーンも多かったなぁ。穴はどうやって撮ったんだろう、スタッフが掘ったんだろうか。

●ショーシャンクの元ネタ?

物語は少しショーシャンクっぽくて、「腐敗した権力に対して知性と根性で反抗していく一匹狼」の話。わかりやすい勧善懲悪。
漫画原作らしく、どこまで忠実かわからないけど、男への復讐という意味では『プロミシングヤングウーマン』とかの先駆者とも言える?

終盤のかっこいい殺し方集みたいなやつも面白いけど、かなりバッドエンドに思えて、愛という感情に引きずられたせいで、人生が変わってしまっている。
直接の復讐や権力の破壊のために人生を賭けるよりも、ショーシャンクのように平穏を手にする方がよっぽど復讐になるけどなぁ。そもそもが獄中だから回帰ではあるけど。

その他
・噛み付くからサソリなんだろうか。
・シリーズ4作目には田村正和もいるそう、観たい
・ゆきをどうして可愛がっているかの背景がわからなかった
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