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落下の解剖学のolnのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.5
【真実とは誰かを信じると決めること】
ジャンル:法廷もの

先にお断りしておきますと、個人的に法廷ものは苦手です。予告編の雰囲気から、主軸はミステリーなのだろうと勝手な想定をしていたのですが、早々と近接した苦手ジャンルへ突入してしまい、果たしてこの長尺に耐えられるだろうかと一抹の不安が過ぎります。

なぜ苦手かというと、よくある法廷ものでは、主人公に感情移入させ、無罪になれば安堵、有罪になれば法制度への落胆の念を持ち帰らせる構造が蔓延っています。どういう感情になればいいのか、レールが敷かれている作品を退屈に感じてしまうので、苦手なのです。

しかし、本作のポイントは、帰着する先が先述したいずれでもなく、どう転んでも納得はし難い構造になっており、”視点”次第ではどうにでも解釈できる起承転結になっていることにあります。この”視点”が、一筋縄ではいかない多層的な構造になっていて、その人が言っていることを信じることにした、という帰結が絶妙であったように思います。
先日鑑賞した"梟"然り、視覚的なハンデを有する人が、世界を如何に見るかが取り沙汰されている世相ですね。
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