とがぴ

シン・仮面ライダーのとがぴのネタバレレビュー・内容・結末

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

庵野さんが作る大作仮面ライダー映画という事で何年にも渡って注目し続けてた本作。蓋を開けてみたら自分が想像してたものとは全然違うというのが正直な感想だった。

「孤高、信頼、継承。」本作の宣伝キーワードとしてこの3つが用いられたし、それらは勿論正解なんだけど、これに加えて「暴力、恐怖、葛藤」があったように思う。

冒頭のライダー初登場シーンやクモオーグ戦は予想通りオマージュが挟まれるも、本能のままにSHOCKERの下級構成員達を殴り潰し続ける仮面ライダー(第1バッタオーグ)が最初怖くて目を瞑ってしまってた。

しかし、庵野さんが逃げずに描きたかった部分はまさにそこにあって、その後本郷猛は自身の力に怯え、痛みを感じ、悩み苦しむ。暴力がもたらすもの、暴力を描く事を真摯に描いたからこそ、初めてPGー12指定映画な事に納得が出来た。

一撃の重さ。パンチやキックを娯楽にせず、痛みが伴う、恐怖が付き纏う。ここの点の描写は自分が大好きだった仮面ライダークウガにとても通ずるものを感じた。

今作のライダーキックがただの痛快なアクションの見せ場にならず、必「殺」として文字通り表現したのはまさにその象徴で、仮面ライダーの戦いは命のやり取りをしてるのだ、という昨今どうしても忘れがちな要素を強調してるのが本作の特徴だ。

正直、不満も相当ある。本来期待してた大作ライダー映画だからこそCGやアクションにニチアサでは出来ない「カッコよさ」と言った部分は殆ど満たされず、庵野秀明の力をもってしてもチープになってしまうのかという点には相当ガッカリしたし、多分ここはもう仮面ライダーというか日本の特撮の限界なのだろう、とは感じてしまったのは本当に残念。

SHOCKERライダー戦なんか何やってるかマトモに分からないレベルのチープなCGだったし、庵野さんカブトが大好きならハチオーグ戦の高速バトルはもっとカッコよく描けないの!?って不満が大爆発してしまった。

だがしかし、描きたかったものはどうだろうか。キャラクターはどうだっただろうか。これは仮面ライダーでしか描けない事をしっかりやったと言えるのではなかろうか。

本郷猛はとても心優しく、決して気が強い青年ではない。それでも、例えルリ子さんを喪っても艱難辛苦を乗り越えて他者の想いを背負える、誰にでも出来る事ではない「ヒーロー」だったからこそ、「ヒーローの象徴の色」をした赤いマフラーがあれ程似合ってたのではなかろうか。

そしてその想いを一文字隼人/仮面ライダー第2号に託し、漫画版でのバトンタッチ要素を落とし所に持って行き、「1人だけど、"1人ぼっち"ではない」というビター路線を意識した本作の中で、明るい路線の作品の過去の仮面ライダー作品への敬意も決して忘れなかった点は120点だと思う。

評価が難しいし、近年ニチアサライダーを追わなくなった自分にとってこれが最後の仮面ライダー作品になるのかと思うと色々な感情が交錯するし、全然ダメだったって人の気持ちも、良かったと思う人の気持ちもどちらも分かる。

ただ、仮面ライダーにまだまだ色んな可能性がある事を見せた作品だとは思いました。

さよなら、仮面ライダー。ありがとう、仮面ライダー。
とがぴ

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