日本を襲う未曾有の危機『シン・ゴジラ』、外宇宙からの侵略『シン・ウルトラマン』に対して世界は一気に狭くなり、ご町内のスーパーヒーローどころか、下手をすれば誰にも知られることがないヒーローの悲哀と孤独を描くシンユニバースの完結編(？)。
単に舞台となる世界や状況だけでなく非常にパーソナルな作風となったのは、監督が前二作の樋口真嗣から庵野秀明に交代したところが大きい。
勝手な印象だが、「俺が超絶カッコよく撮ったこのカットを見ろよ？最高だろ？」とニッコニコで見せてくるのが樋口真嗣で、あくまで自分が撮りたい映像を撮った後自分だけで見返して小声で「ヨシッ」と呟くのが庵野秀明だ。
商業作品である以上ある程度観客の目線も意識はするだろうが、作風の違いは両者のヲタク傾向の違いではないだろうか。
また、制作が東宝から東映に変わったことも大きい。
本作はおそらく意図的に東映黄金期のアバンギャルドさ、キッチュさ、胡散臭さ、泥臭さを排除せずにそのまま再現している。
それに加えて庵野秀明が撮りたいのは昨今のアメコミ映画のような現代的にアップデートされたスマートな仮面ライダーではなく、自分が子供の頃に見た仮面ライダーそのものである。
なのでCGがショボいとか、スーツの造形がチープだとか、髪の毛が見えてるのがダサい、老害ヲタクのノスタルジーについていけないなどの批判は的外れだし、たぶん庵野秀明もそういった層は観客として想定していない。
「自分が撮りたい映像を撮る」「面白かった君は無言で握手」本作はそういう映画ではないだろうか。もちろん何の予備知識もなく観て面白かったと思った人も全然OKだ。その感性を大事にしてほしい。
自分の評価としては、「面白かったけど、『シン・ウルトラマン』ほど好きじゃない」というのが素直な感想。
BGMが微妙に合ってないとか、セリフが聞き取りづらいとか、「怪人のアジトに行く→倒す」の繰り返しでワンパターンだとか、「ところがぎっちょん」が寒すぎるとか合わなかった部分はあるが、そこまでヒステリックに叩くほど駄作ではないと思う。
よく批判されるCGも自分は気にならなかったし、庵野秀明の実写作品でありがちな変なカメラワークや工場や電柱ばっかり撮るイメージショットも抑え気味でかなり毒抜きはされているように感じた。
まあ、ただやっぱりドラマはつまらないし、女優を綺麗に撮ることにも興味ないよね、というのが減点ポイントだろうか。
浜辺美波も西野七瀬も長澤まさみも絶妙にブサイクだった。
あとは映画の出来が多少歪でもドラマがつまらなくても、『シン・ウルトラマン』のファーストスペシウム光線みたいなキメのカットがどこかひとつでもあれば評価も激変したかもしれないが、残念ながらそこまで刺さるカットもなかったので、初見の感想としてはこんなところか。
