KANA

ひまわりのKANAのレビュー・感想・評価

ひまわり(1970年製作の映画)
4.0

名作再鑑賞シリーズ 。笑

これは昔、母に勧められて初めて観た。
まだお遊びのような恋愛ごっこしかしてなかった当時ですらグッときたのに、あれから私自身、身を焦がすほどの大恋愛をして…
今観たら女としてジョヴァンナの狂おしいほどの思いが骨身に沁みてよくわかる。

『自転車泥棒』があまりに有名なネオ・レアリズモの巨匠ヴィットリオ・デ・シーカが、自作の常連でありイタリア映画界を代表するスター的存在であるソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニを迎えて綴った哀しい愛の物語。

極寒ロシアの戦場で消息を絶った夫の行方を求めてジョヴァンナが行き着いた現実。
その直後の、ローレンのショックと絶望感の演技が圧巻。
決して大袈裟じゃない。
好きで好きで好きで好きで……彼も自分のこと愛してくれて、抱きしめてくれて守ってくれて。
で、あの光景見たらああなっちゃうよ!
今となれば序盤の24個卵のオムレツエピソードが無邪気で懐かしくて、そして恨めしくて…
忌々しい戦争によってこんな感じの男女のもつれに発展し苦悩するに至ったケースっていっぱいあるんだろうなぁ。

ちなみに、完璧なカーヴィーボディと一本筋の通った立ち振る舞いで成熟した大人な魅力のローレンに対して、少しあどけなさの残る可憐なサベーリエワの小悪魔的魅力も捨てがたい。

ヘンリー・マンシーニのこの上なく哀愁に満ちたメロディーや叙情的な映像もセンチメンタルな悲恋物語を盛り上げる。
オープニングから映し出される、広大な地にどこまでも咲き乱れるひまわりの映像は、美しくもメランコリックで強烈な印象。
ナポリの太陽を男に、その太陽に向かって大輪の花を咲かせるひまわりを女に例えてるよう。
ひまわりって一見明るくて元気なイメージだけど、個人的には「みんなを元気にしよう」って、顔で一生懸命笑って実はココロはどこか哀しげで、とっても健気な花だと感じてる。
ミスチルの『himawari』で桜井さんが喩えてるみたいに。
本作もジョヴァンナ、そしてアントニオのなんともやりきれない切ない心情のメタファーをひまわりに託すような演出が美的で秀逸。
エンドロールでもう一回映してもらって浸りたかったくらい。

原点回帰というか、シンプルに感傷に浸るメロドラマもたまにはよき…
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