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恋の病 〜潔癖なふたりのビフォーアフター〜のベイビーのレビュー・感想・評価

3.8
重度の潔癖症でタイピングがやたら遅い青年ボーチン。彼は一度気になり出したらそこから意識が離れなくなる「脅迫性障害」という病気と闘う人生。外気に散らばる菌が気になり過ぎて、外出もままならない生活をしています。自称"偏人"。

同じく「脅迫性障害」で重度の潔癖症を持ち、プラス窃盗癖まである女の子ジン。彼女も外の空気が苦手で、3時間以上外に居ると身体中に麻疹が出てしまう体質。しかも窃盗をしないと一日中落ち着かないらしく、そのために外に出かけなければならない、もどかしい人生。

誰もそんな自分のことなんて理解してくれない…

そう思わざるをえない、特殊すぎる二人の病い。その二人が偶然にも出会い、互いを分り合い絆を深めていきます。

もう、二人は離れられない。

二人が互いに同じ病気のままで居るうちは…

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そんな風変わりな調子で始まる、二人の恋の物語。作品としては、キービジュアルからでも分かるとおり色彩がビビットでオシャレ。セリフも軽妙で面白く、映像もシンメトリー多用でセンスあり。序盤はとにかく明るく二人の恋の行方を楽しむ展開に…

しかし、Bパートに移行してからは、少し重めなストーリーになって行きます。

この作品の原題は「怪胎」。本来は中国語で「奇形(胎)児」を指す単語ですが、一般的な会話では「(良くも悪くも)他とは変わってる人」という意味で使われているそうです。

ボーチンとジンは、周りから「怪胎」として見られていました。とても生きづらい人生だったに違いありません。それはもちろん自分で「潔癖症になりたい」と願った人生ではなく、結果としてそういう病んだ自分になってしまったのですから、その病気自体、誰からも責められる覚えはありません。それは抗えない"運命"というものです。

ある日突然、そんな二人が出会います。
必然だと思える出会い。それもまた"運命"です。

この作品の邦題は「恋の病 〜潔癖なふたりのビフォーアフター」。まぁ副題は良しとして、「恋の病」に関しては「恋と病」のが正しいのかも知れません。この物語では、"恋"も"病"も共に「運命」によって与えられたもの。と言っているわけですから、"病"は"恋"に掛かる言葉ではなく、同等な意味として捉えるべきだと感じました。

この物語は「運命と選択」のお話。互いの価値観が永遠に重なれば素敵なことですが、二人が進むベクトルが少しでもズレてしまうと、その二つの向かう先も離れてしまうものです…

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この作品の特徴は、なんと言っても画角のサイズ変化ですよね。Aパートは不自然なくらい正方形な画角。そこに可笑しな二人の特徴がよく現れています。いわゆる"風変わり"的な演出。

それからBパートの通常なスクリーンサイズ。きっとこの意図は「普通になった」「視界が広がった」ってことなんでしょうね。

そんな特徴溢れる映像。なんと全編スマホのみで撮影されたとのこと。やたらとiPhoneやらMacBookが映ってるなぁ。と思ったらそういう理由があったんですね。なるほどぉ。

最後はなんだか呆気なく終わった感じがしましたが、後からこうして噛み締めて行くうちに、とても味わい深い作品に感じられます。最後に大どんでんのCパートが、この物語を引き締めてくれました。

やっぱり台湾映画は好きです。
あと、ジンも観ているうちに、どんどん可愛くなっていきました。とても魅力的です。
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