イベリー子豚

ムーンライト・シャドウのイベリー子豚のレビュー・感想・評価

ムーンライト・シャドウ(2021年製作の映画)
3.7
もうこれは写真集です。
いや、写真展だ、個展ひらいてますよ。
エブリータイム・オールシーンが美しすぎる。

主演二人は言うまでもなく
何気ない後ろ姿や人物の入ってない風景まで
光の屈折とフォーカスが「画になってる」過ぎです。

映像が綺麗な映画はそこまで珍しくもないけど
邦画でこんなアプローチは未体験ゾーンかな……
これはもうアートですね。
あまりにも幻想的で地に足のついてない空気感、
ある意味「観るドラッグ」と言えるでしょう。


まずは小松の菜奈さん!
もう表現力の次元が1つどころか3つ4つ上!
表情、息遣い、ちょっとした仕草は台詞を必要としませんね。
多分、世界イチ海老天の魅力を伝えた女優さんじゃないですか。
今回の衣装や青いまつ毛も似合いすぎだし
久しぶりのランニングウェアだし眼福も止まりません。

そして宮沢の氷魚さん!
貴方は何故、そんなにいつも
端正でミステリアスなの?
猟奇殺人鬼とか素人童貞会社員とかご興味ありませんか??
相変わらずの浮世離れっぷりが作品にあってましたね。


……なんてぇところは、とてもビビッと刺さって
きやしたものでごぜぇますが……

いかんせん面白いかどうか、ですね。
難解というより
「節子、考えたらアカン!感じるんやでぇ!」精神。
物語として成立してなさそうでギリギリしてる
、みたいな。


原作未読で気になったから
パンフレットの決定稿・脚本を拝見して驚きました。

「4割ぐらいのシーン、まるっとカットされとる!!
セリフの省略もスゴいんじゃ!!」

果たしてどちらが原型に近いのか
僕には判断できませんが、こちらのシンプルなこと!

映画ではあやふやだった、それぞれのバックボーンや
当時の感情、前後のエピソード、全部ありますやん!
めっちゃ分かりやすいストーリーでしたやん!

でも問題は筋書き通りの作品だったら
確かに想像しやすくて、コッチの感情は乗りそうだけど、逆に言えばとてもベタでありふれてるところ。


多分ですが
監督が相当、原作を読み込んで咀嚼して
エッセンスだけ丁寧に抽出して自分なりの再構築されたんじゃないですかね。

そこに役者さんたちのパフォーマンスと
ロールキャベツ、幻想的な映像なんかが
ピタゴラ装置的に働いてこの不思議な映画になったような気がします。


つまり僕としましては
「月影現象」という名前はしっくりこないものですが
「ムーンライト・シャドウ」の響きがこの季節に
マッチしてるから
リバーサイドでお月見しちゃって帰りに
サンライズ散歩したくなるような、
体験が出来るかもしれないよ
って言いたかったんです、かね。

最後に
「本田以外のエドモンドも侮れないね」