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スティルウォーターのAyaxのレビュー・感想・評価

スティルウォーター(2021年製作の映画)
3.9
ばつが悪い映画の傑作爆誕。
あんまり期待してなかったのもあって、すごく良かった。先に言っておくと、明るい話や勧善懲悪的なスッキリする話が好きな人にはおすすめできない。
異国で捕らえられた娘をスーパーお父さんが助けに行く、リーアム・ニーソン系映画かと思ってたら全然違う(良い意味で)。
後半まで事件の核心に迫らないので、途中眠くなるかと思ったら全くならず。序盤と中盤はマット・デイモン父が言葉が通じない異国で奮闘し、馴染んでいく過程と娘との関係の描写だけで結構面白い。
メインの舞台はフランスで90%くらいのシーンがマルセイユ。ぱっと見きれいそうな街で行ってみたいかもと思ったけど、闇の部分まで描かれてるのでフランス素敵だけでは済まない。ブイヤベースは食べたい。一方で、フランス語が話せない主人公を助けてくれるフランス人女性がありえないくらい素敵で、お洋服も住んでる部屋もセンスが良くて鼻血出そうだった。豪邸に住んでるとかではなくて、普段着の姿と暮らしがおしゃれ。彼女に私が思うフランスの素敵が詰まってる。私が憧れたいフランス。カミーユ・コッタン。「ハウス・オブ・グッチ」にも出てたぞ!
マット・デイモンはオクラホマの油田で働く肉体労働者の役。高校中退で学が無く、異国で無実の罪で刑務所に入れられてしまった娘にも全くあてにされてない。マット・デイモンって教養がある人と何かで見たので調べてみたらハーバード大学に行ってた(俳優の仕事をするようになり中退したらしい)。この父親(主人公)は人に笑われるようなただの筋肉バカってわけでなくて、いろいろなことをスマートに進められない男という感じでそのさじ加減が良いなと思ったし、今まで全然興味なかったけどマット・デイモンって演技上手いんだろうな。ちゃんとダメそう(役に立たなそう)な感じに見える。「最後の決闘裁判」でもジャンボ尾崎カットの決闘馬鹿役がすごく上手かった。おそらく見下した質問としてフランス人に「トランプに投票した?」って聞かれるシーンがあって、斜め上の返答するダメ親父ぶりが良かった。全然悪い人ではない(むしろ良い人)のだけど。この親父にしてはとてもとても頑張っていて憎めない。
昨今、伏線とか伏線回収とか普通に言われるようになってきていて、何でもかんでも伏線と言うのはやめていただきたいと常々思っている私が今作に関しては「世界よ!これが伏線だ」と言いたい。大変よくできてると思う。思いがけず良い映画を観たぞという感じ。「スポットライト」の監督が監督&脚本。
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