るる

名探偵コナン 漆黒の追跡者(チェイサー)のるるのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

後半は良かった。というか、脚本は悪くなかったと思う。

冒頭からいきなり、なんで麻雀牌、と思ってしまったり、エレベーターだの北斗七星だの意味を重ねていくのは面白いけど、さすがにこじつけっぽいなとか、あまりにも二転三転する推理、というふうに感じてしまって、もったいなかった。

佐藤刑事の優秀さを強調するのはなんだったんだろうな、その正体は黒の組織の一員かもしれぬという、ミスリードの演出になってなくて、刑事たちのシーンがとにかく緊張感のない、閑話休題にしか感じられなくて、

ついでにカブトムシにこだわる少年探偵団のエピソードも閑話休題に思えて、これらのシーンが続くと、どうにも冗長で。とにかく前半は本題が散漫、退屈に感じてしまった。

演出がなあ、下手だよなあ…音響がまずいのかな。蝉の鳴き声も、のんびりしちゃってて。もっとミンミンミンミンジワジワジワジワ、イライラと緊張感を煽るような演出にもできたと思うんだけどなあ。
夕方には打って変わってヒグラシが鳴いていて、電話の先ではまた違う蝉の鳴き声がしていて、ってのも…うーん、なんだろ、音響って難しいね。

やたらとコミカルな音楽で映し出される、死んでしまった恋人との幸せだった頃の記憶とかも…もうちょっとしんみりした音楽で見たかったなあ。

でも、なにを見せられてるんだ?という気持ちにはなったけど、こういう事情があって復讐を考えた、と示すことは大事だなと思ったし、

ちゃんとこう、探偵が自殺しようとする犯人に説教するのが、妙な演出、クサイ演出だったけど、良かったよ。子供も見るアニメとして大事だよな。って思ったし。

原作ファンとしては、犯人を死なせてはならない、月光の事件みたいな結末を繰り返させない、という矜持を持ったコナンを見られて良かったし、

直後にアイリッシュを死なせてしまう、「アイリッシュを盾にしやがった」という台詞(違うのに!)をかぶせてくるのも、コナンの無念が際立ってて、うまい、よくできてると思った。

まあ、コナンの秘密を知るアイリッシュの口を封じるためには、ピスコのように、ジンに情報を漏らす前に、なんらかの形で死なせなきゃならなかったと思うし、かといってコナンに手を汚させるわけにはいかないわけで、脚本上の苦心なんだろうな、という見方をしてしまったんだけど。

肉弾戦のアクションには迫力があったし、死闘の末に、という感じがして良かったよ。

「ライフルは無理だけど、拳銃なら」やべええ、蘭姉ちゃん、やべええ、強すぎっていうか胆力がすげえ。

アイリッシュがチンピラみたいな態度なのはどうかと思ったけど、マスクが剥がれかけてニタリと笑う顔とか、キマってた。

ヘリコプター撃墜には笑っちゃった、「なんだ…何者なんだ…!」ほんとだよな!!!

七夕のエピソードとか、ぜんぜん怪しさが伝わってこない刑事たちとか、平次の登場とコナンの死亡フラグとか、意味がわからんというか、要素が多いなと感じたし、そのわりに前半の葛藤がちっとも後半に繋がってこないし、ツッコミどころはありすぎるんだけど、

いろいろ盛り込もうとしてるなかでも、この人間ドラマは外せない、という精神を感じられたのは良かったな。描く必要のない人間ドラマってのはそりゃあるけど、キャラ萌えの為に、キャラのカッコよさを強調する台詞ばかりだと、ゲンナリしてしまうので。

「責任は、私がとるから」「わかりました、責任は、僕がとります」佐藤刑事と高木刑事のやりとりはカッコよかったけどね。

キャラのカッコよさを示す為の事件、アクションじゃないところが良かったです。どこがどうマズかったかが、なんとなく読み取れたから、スッキリしたのもある。古内一成さんの脚本のコナンなら、今後も観たいなって思えました。
るる

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