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Mouse Heaven(原題)のTnTのネタバレレビュー・内容・結末

Mouse Heaven(原題)(2004年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

 子供の頃ディズニーランドに行って、誰しも一つや二つ怖さや違和感を抱いたはず。そういえばかつて、プーさんのハニーハントとホーンテッド・マンションがかなりトラウマだった。前者はあまりにもサイケデリックな風貌のキャラ造形と狂った世界観に、後者は普通に怖くて。しかし、思えばそうしたトラウマに依拠するかのような趣向を今は持っていたりして、むしろ好きなのだ。その感じで今作も、世を席巻するミッキー・マウスに幼少のトラウマを見出すと共に(付け加えるとミッキーのきぐるみにもビビってたらしい)、そのキッチュさに拍車を掛けるアンガー節を、当時の合成処理なんかもふんだんに入れて作り上げられている(時すでに2005年だが)。

 あとはアメリカのミッキーの造形が普通に不気味な奴が多くて、アンガー自身もミッキーについて”demon ‘fetish’ figure”とさえ呼ぶ軽蔑っぷり。冒頭は群れるリアルなネズミ。資本主義の中でここまでネズミのシンボルが象徴化される世界、特にアメリカは面白い。ラスト、銀色のミッキーマウスが映し出されたあと、エンドクレジットを挟んで映されるカットには、小銭3つを集めてミッキーマウスを形作ったものが映し出され、最大の皮肉を捧げている。

 今作はいくつかの章に分けられているが、いつも以上にアンガーの選曲センスが良い。矢継ぎ早に変わる章と畳み掛ける音楽にはDJ的な感覚さえ感じる。また映像をしっかり音楽に合わせており、今までのぶっきらぼうに音楽を貼り付けただけの表現とは違う。アンガー全盛期の時代、まだDJなんていなかったわけで、実はそういうことをずっとしたかったけど上手く形にできていなかったのかなと思ったり。
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