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ノーカントリーのTnTのネタバレレビュー・内容・結末

ノーカントリー(2007年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 厳格な映画表現、削ぎ落とし洗練された映像の手さばきに惚れる(それに倣って私も多くは語るまい)。最後には殺人鬼がブーツを見るという仕草だけで、我々は察しなければならないほどに。そして描かれるのはまさに「ようこそ、男の世界へ」と言わんばかりのバイオレンスとルールが交錯する。ちなみに私は主人公モスとアントン・シガーの対決を「老人と海」の老人とカジキだと思って見ました。あと登場人物皆カウボーイハットを被っているので現代版西部劇なのかなと。しかし、西部の仁義が、”ノーカントリー・フォー・オールドマン”として追いやられる。ラストのトミー・リー・ジョーンズ演じる保安官が夢を打ち明けた後のほんのわずか数秒のカットに、彼の小刻みに震える姿が映し出される。彼はこの事件に、なんら関与できなかったのである。

 男たちのルールの巻き添えを食らうモスの妻は、シガーのコイントスによる駆け引きを断る。シガーは彼女を殺すが、それは今まで彼が信念として頑なに持っていたはずのルールを破ったということである。その後、信号というルールに裏切られ瀕死に。

 神に見放されたように殺された彼らだが、尊厳は確実に守られたと私は思いたい。シガーは、自らの信念を失って陳腐化してしまう。血痕で汚れなかったブーツには、もはや守るべきことなど無かったのだ。そんな彼さえもを囲う大きな資本というルールだけが、何事もなく動き続ける。金で始まり、金で終わり、金だけがどこまでも運ばれていく。
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