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エルヴィスのTnTのネタバレレビュー・内容・結末

エルヴィス(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 エルヴィスに纏わる光と闇の織りなす、目まぐるしく、虚飾に満ちた輝きを放つ映画だった。冒頭クレジットの煌びやかさが良い。ラストのエンドロールに至っては、その装飾はエルヴィスの皮を鞣しているようにさえ見えた。

 映画はトム・パーカー大佐が語る体なので、彼のペテン的で、如何にも映画的な外連味を持って始まるのに、悔しいながらも楽しんでしまった。あるニュース的な側面(フッテージ映像など)や、無駄にスプリットスクリーンにしたり第四の壁を壊すなど、ガチャガチャに始まる。いけ好かない人物の一生と、雪だるまのフォルムを持つトムとスノードームという関係性から、市民ケーンとの類似性が見いだせる。

 エルヴィスの目は据わっている。操られる前から、既に何か自らの業を見据えたような目元が素晴らしい。オースティン・バトラーの演技や容姿は、もはやエルヴィス以外に考えられないくらいぴったり当てはまってる。

 大佐は最後までエルヴィスの音楽を音楽として理解しなかった、どこまでも搾取した。しかし、エルヴィスは搾取され死んだんじゃない、大佐の言う通りだ。彼は歌の元で殉教し、魂を大佐に売るのを拒んだのだった。最後まで本当にエルヴィスの曲に感動できない大佐は、もはや哀れなのだ。腰振るな、クリスマスソングを歌え、それらを無視して歌うカッコよさったら、これぞロックンロールだと思わせられる。

 「売れる」とは何なんだろう。今作、どこか「セッション」と似てる点があるように思える。評価されるために”何か”を売り飛ばさなければならない。その何かは、恐らくプライドなんじゃないだろうか。「セッション」は、フレッチャーの正しさの元でプライドをへし折られ、今作は商業の名の下に何でも屋に成り果てる。しかし、よく高いプライドなんて捨て去った方が社会生きていけるみたいな言説を見ては、果たして彼らが全てを投げ捨てただろうかと思うのだ。「セッション」のラストはフレッチャーの指示を無視し、無下にされた自己を取り戻す。同じく今作も、エルヴィスは本人映像でもってプライドを保っていたことが判明する。奪えない、決して彼らのプライドは(ここでU2の「Pride」の歌詞を思い出すなど)。

 エルヴィスが、ろくな映画に出れずスターになりたいと言っている姿が、まさにこうして映画として形になるところに愛を感じる。エルヴィス、お前はまさにこの映画においてヒーローとなったよ。「ラスト」の本人映像もそのリスペクトであふれている。とにかく彼の名誉挽回に尽くした映画で、愛を感じた。

 エンディング、かつて曲中でエルヴィスを揶揄していたエミネムが務めてるところ変にグッときた。犬の前で歌わされるのとか、太って変な衣装で歌ってた晩年とか、たしかに弄られるポイントは多かった。ちゃんと改心したねエミネム(エルトン・ジョンとも仲直りしたりと、案外お前いいやつやねんな)。
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