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長崎の郵便配達のdarumaのレビュー・感想・評価

長崎の郵便配達(2021年製作の映画)
3.8
戦争映画〆。これは最寄りで上映があったのですが、時期的&金銭的に観れずで…凄くは気にしていないけどちょっと気にしてる、レベルの作品でした。でも、始まってみてビックリ…ドキュメンタリーだった!!(衝撃)

全然知らずに観たので、いつまでたってもストーリーにならないなぁ…20分くらいでようやく気付きました。あ、これは導入じゃなくて、ずっとこんな感じなのか、と。事前にドキュメンタリーと知った状態で観たら、もう少し評価が高かったかもしれません。でも、後半はそのドキュメンタリーである弊害が思いっきり出ちゃってるなぁ…という感じ。(制作者オチ=(制作者の自己満)にするのはあまり好きではないです。。受け継ぐ、という意味はよく解るのですが…)拍子抜け分と結末でやや下がったかも。

よかった所は、視点が外国人であるということ。
あと、広島ではなく、長崎である意味。

主演(でいいのかな?案内人的な人物。脚本にも参加している)の方の父親がイギリス空軍で第二次世界大戦中に英雄的な活躍をされた方だそうで、その方と長崎の被爆者の交流の話です。英雄であることはちょっと「おお…」という感じではありましたが(身近感が減る。。)、それ故に原爆に興味を持った、と考えると意味は分かる。彼の書いた本の名前がこの映画のタイトルにもなっています。(だが、その話自体を映画化している訳ではありません)

その娘さんが、父親が残した被爆者インタビューのカセットテープを亡くなった後に見つけ、そこからストーリーが進んでいきます。
彼女の立ち位置が私たち観客視点というか、戦争の事を何も知らない世代の自分から見るとまさにそう見えて、それが非常に良かった。

自分は日本人だけど、目線は外国人と同じなんだなぁ…

ということに気づいて、はっとした。
何も知らないんだな…
その事の重大さに気付いたというか。

長崎である意味は、土地柄、キリスト教の信者が多かった、ということです。広島と長崎の被爆者数を比較すると広島が圧倒的に多いので、原爆=広島という視点になりがちですが、キリスト教信者に限って言うと、広島が2000人だったかな?長崎は2万人近く亡くなったそうです。

キリスト教信者の多そうな国が落とした爆弾で、キリスト教の人が多数亡くなっている…
原爆の投下地について、最初は小倉を狙っていたが、天候不良で長崎に変わったと言っていました。だから全くそういう意図はなかったのだと思いますが(狙ってもいないし、多分気にしてもいない)、なんだか皮肉めいたものを感じた。

信仰が同じだからと言って救われることはないのだろうが、分断の原因は何なんだろう…と改めて思ってしまう。

あと、これは原爆映画ではきっと定番だと思うのですが、被爆者の方のリアルな映像は、やっぱり泣きそうになりました。
特にこの作品は、当事者が子どもの頃に被爆している(16歳の時に郵便配達をしていた方だそうです)ので、胸が痛かった。

エンドロールのアニメもよかった。
郵便配達の自転車少年を追いかけていく人。
追いつきそうになるのだけれど、最後は行ってしまう…
まさに、タウンゼンドさんと谷口さんを表現していた。
追いかけても追いかけても、当事者には成れない。

監督が川瀬美香さんという方で、最初はドキュメンタリーだと思っていなかったので、一瞬「河瀨直美さんを指しているのか…?」と思ってしまった。すみません、違いました。(脚本もこの方がメインなので、後半のオチも自己満ではないと言えばそうです)
余談ですが、何回か映る鳥居に「川瀬○○」と書かれていて、関係者の会社なのかな…?とめちゃめちゃ気になってしまった(苦笑。スポンサーではないと思うんだけど)

これ、ロングライド配給だったのか…(出てたっけ?一応クレジット見てたつもりなんだけど)
「MINAMATA」や「パリ13区」「ブックスマート」などを手掛けているところです。
私が観た中では「パブリック図書館の奇跡」が一番好きかな。マイベストムービーに入っています。
リアル感は確かに…(ドキュメンタリーなので、リアルしかない)
実話ベースというか、ドキュメンタリーが好きな方にはおすすめです。
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