YasujiOshiba

墓地裏の家 4K レストア版のYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

墓地裏の家 4K レストア版(1981年製作の映画)
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U次のタイムアップに滑り込み。みてよかった。

どうやらフルチの『ビヨンド』はアルトーに捧げられ、『黒猫』はもちろんポー、そしてこの『墓地裏の家』はプロヴィデンスの作家ラヴクラフト(Howard Phillips Lovecraft、1890 - 1937)に捧げているようだ(Michele Romagnoli, "L'occhio del testimone: il cinema di Lucio Fulci", Ferrara, Kappalab, 2015, p.28)。

ラブクラフトといえば、カーペンターも『マウス・オブ・マッドネス』(1994)もそうだった。夢野久作なんかと同時代人。ある種の人間の探究が、この種の恐怖を掘り出してくるといわけか。

参考にした映画が1969年のスペイン映画『La residencia』だという。その監督のナルシソ・イバニェス・セラドール(Narciso Ibáñez Serrador 1935​-2019​)とフルチは知り合いだという。このスペイン映画、YouTube に全編アップされている。ちょっと覗いてみたけど、なるほど、フルチが「とても素晴らしい映画だ」(è un film straoridinario)と褒めるだけのことはありそうだ。メモしておく。
https://www.youtube.com/watch?v=LDebjVZKDrc

例によってオープニングから惹きつけられる。被害者はダニエラ・ドリア。彼女は『地獄の門』の口から内臓を吐き出して死んでゆく役をやった美女。ここでは恐怖に震えながら、地下室のあいつの餌食になる。フルチの作品では、未見だけど『ザ・リッパー』(1982)や『黒猫』(1981)でも見事なゴア・ガールぶりを披露。英語だけど、彼女のインタビューを見つけたので貼り付けておく。
https://www.horrorparlor.com/2017/10/unsung-heroine-of-italian-horror.html

そんなダニエラの迫力ある冒頭のゴアシーンに続いて、静かなシーンだけどゾッとさせるのが、問題の館の窓の女の子、白黒写真、そしてそれを見る男の子、母親が登場して、女の子と対話があったことがわかるとき、写真から女の子が消えている。すごい!

そしてラストシーン。通り抜けられるはずのない石棺の割れ目を通り抜けてから、女の子とその母親と手を取り合って館の外を、墓地へ歩いてゆくところなんて、ぞっとさせながらも美しすぎるではないか。

いやはやフルチ、なかなか奥が深い。まだまだ楽しませてもらえそうだ。
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