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ONODA 一万夜を越えてのdarumaのレビュー・感想・評価

ONODA 一万夜を越えて(2021年製作の映画)
4.5
WOWOWで今月1番楽しみにしていました。期待にたがわず、めっちゃくちゃよかった…!劇場鑑賞していたら間違いなくその年のベストに入る作品。ストーリーも出演者も完璧すぎた。

戦後30年近くジャングルに取り残されていた日本兵の話、という程度の事前知識でしたが、想像を絶する凄まじさだった…背景がとても丁寧に描かれているので、感情移入できます。どうしてこうなってしまったのか。
思想の洗脳。
戦争って本当に怖い…

元は井之脇海くんの出演で公開当時に作品を知ったのだったかな?ずっと観てみたくて、WOWOWの放送をリアタイしていたのですが、ちょっと疲れていたので実は彼が出てきた直後くらいに寝落ちしてしまい…起きた時には既に主演が津田寛治さんにスイッチした後で(!)、その後、太賀くんの再登場で鳥肌…そういう事か!と。(繋がり。中間の記憶が飛んでいるだけにインパクトが強すぎた)

後でその中間部を観るという、かなりおかしな見方をしてしまったのですが(大変申し訳ない!)、その中間部がまたじわじわ来すぎた…予告で海くんの声がしていたので、結構重要な役なのかな?とは思っていましたが(唯一の帰還者?というようなことも事前に見かけていました)、これは凄い…撮影時期がいつ頃なのかわかりませんが、彼の、子役から現在の大人役のちょうど中間みたいな絶妙な立ち位置が、まさにフィットしていた。
最初は気弱な感じ、まさに何も知らない子ども?みたいな…出番のほぼラストにはそれが青年となって自分の意志をはっきり持った顔になっていた。
この体験を通して大人になって(ならされて)しまった人。
ぶっちゃけ、海くんは演技がめっちゃうまいかというとそうではないと思うのですが(ごめん!)、この作品は非常に合っていて、とてもよかったと思います。彼の作品選びが好きすぎる。

とりあえず推しメンから書いてしまいましたが(笑)、
とにかく、出演者のキャスティングが皆、絶妙すぎる!!
主演の青年期を演じた遠藤雄弥さん以外、知っている方だらけの作品だったのですが、素晴らしかったです。

まず、松浦祐也さん!
「岬の兄妹」感をうまく使っているというか、ちょっと軽妙な感じのとてもいい役どころです。

次にカトウシンスケさん!
「ケンとカズ」から注目している方です。最近ちょこちょこお見掛けしていて、たまたまこの映画を観る前に観たWOWOWのドラマにも出られていました。
好きな作品でお会いすることがとても多いです。7月のWOWOWで1番観たかった「グッドバイ、バッドマガジンズ」にもいい感じの役で出られていました。本作もいい役です…!

余談ですが、WOWOWでは本作はW座という本編前後に道案内的なトークがある枠で放送されたのですが、そちらで、カトウシンスケさんと松浦祐也さんの殴り合いのシーンについてのエピソードが披露されていました。松浦さんが殴る側、カトウさんが殴られる側なのですが、松浦さんが遠慮して控えめに(?)殴っていたところ、監督から「本当に殴ってください」と言われ(!)、カトウさんも「もっと殴って!」とお願いしたそう。カトウさんの意識が遠のいて台詞の間合いが伸びたのだったかな?シーンが長くなったとか…凄い。(ちょっとうろ覚えで書いているので、間違っていたらすみません)

津田寛治さんが遠藤さんから主演を引き継ぐのですが、彼も凄くよかったです。ツダカンさんってちょっとコミカルなイメージがありますが(スカッとジャパン的な方ですよね?笑)、完全に封印していました。確かに面白いシーンはなくはないのですが(松浦祐也さんからスイッチした千葉哲也さんとのやり取りが結構軽妙な感じ)、笑えるというより微笑ましいというか、シチュエーション的にシュールなので、逆にちょっと怖さも感じるというか…とにかくシリアスに徹しているツダカンさんが見どころの一つです。ラストの表情が素晴らしかった。

メインの方々とは違う立ち位置で太賀くんが出ています。私の太賀くんのイメージは少し小柄でどちらかというとふくよかな感じ?だったのですが、彼の後姿が思ったよりもシュッとしていて足が長く、めっちゃカッコよかった。
(役者さんって皆さん細くて背も高く、顔が小さいイメージがあるから、多分普通にカッコイイレベルの人が埋もれちゃうんだろうなぁ…と改めて思った)

エンドロールを目を凝らして見ていたら、伊島空くんの名前が!
どこに出てた…?
わりと序盤の、病気で臥せっているテントの人かな…?と思ったら、やはりそうでした。暗かったのではっきりとはわからないけど、めちゃくちゃガリガリに見えた。役作り凄い…
彼とは直接関係ありませんが、この作品はカンボジアロケだそうで、メインキャストの方々が長期間滞在していたようなのですが、結構体調を崩した(下痢だったかな?)みたいな事を何かの記事で事前に読みました。時代背景的にも痩せていておかしくないのですが、まさに身体を張った演技…

勿論、遠藤さんも凄かった…めちゃくちゃ似合ってました。
彼も戦地に赴く前の状態からエピソードがあるので、変貌ぶりが見事だった。小野田寛郎さんがどうして小野田寛郎さんになったのか、を体現していた。
津田さんとのW主演ですが、やはりメインは彼という感じです。

基本的に、日本人は真面目なのだと思う。
その真面目度合いが強ければ強いほど、洗脳されてしまう。
そして正義感が強い。
どちらも全く悪い事ではないのですが、その両方を悪用というか、うまく利用されてしまった結果というか…
別に当時の上層部が悪だったという訳では無いのですが(結果的にそうだったとしても、その時にそうなるのは理解できる。その人もそれが正しいと信じているのだから)、人間の思想を操作する、というのは本当に怖い事だと思いました。
ある意味、現代に通じています。

あと、W座のトークを聴いていて思ったこと。
「この話は一見、日本人の美談のように感じますが、現地の人にしてみれば迷惑でしかない」
…確かにそう!!(目から鱗)
あんな人(ずっと自分たちを攻撃し続ける人。略奪しに来たりもする)が身近に居たら、ホント嫌だ(苦笑)
日本政府は全く知らなかったのだろうか…回収に行こうとは思わなかったのだろうか?国際問題でしょう!
当時の国勢的にそんな余力はなかったのかもしれないが(実際呼びかけるシーンは出てくるが確保にまでは至っていない。ポーズだけということ?相手が武器を持っているので危なかったり、呼びかけが長期にわたると金銭的な問題があったのか)、ちょっと疑問には感じてしまった。

(後で調べたら、何度か捜索活動はされているみたいですね。ですよね…(じゃないと変だ)。それを軽々とくぐり抜けてしまうほど、凄い人だったという事でもありますね)

横井庄一さんとの比較の話も出ていて、私はよくわからなかったのですが、横井さんのほうはお名前を聞いた事があるような気がしました(小野田さんについては本作を観るまで知りませんでした)。横井さんはただ隠れていた人だったのかな?確かに対照的ですね…帰国の時期的には同じような頃だったのだと思いますが(自分はまだ生まれる前なのでよく知らないのですが)、横井さんが私の耳にも届くような人で、小野田さんが取り上げられなかったのは、何となくわかるような気がします。

これは海外作品なのですよね。フランス映画、なのか…
監督もフランスの方なのかな?アルチュール・アラリさん。
全編日本語、日本人キャストなので、全く違和感なく観る事ができます。
ですが、カンヌ国際映画祭のある視点部門オープニング作品というだけあって、いかにもそんな感じというか、洋画味はかなりあります。

むしろこれは海外作品でよかった気がする。変に邦画にしないほうがいいような…
そういうワールドワイドな感じを出しつつ、でもいかにも日本人、だけど海外から見た「変な誇張されている日本人」じゃなくて、日本人が観て、全く違和感のない日本人観、です。素晴らしすぎる…

ずっと観たかったんですが、DVDレンタルが無く…(WOWOWにも未ソフト化作品として上がっていました。何故なんだろう…権利関係なのかな?配信はあるみたいなのですが)
ようやく観られて、本当に良かった。
戦争物(戦後もの)ですが、そういうことに拘らず、すべての人に観て欲しい。
勿論戦争の産物ということは大いにありますが、人の考え方、みたいなことの根幹が見られると思います。
めちゃくちゃおすすめです。
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