映画には結末を知らないタイプと(ほとんどはこちら)、すでに分かっている結末へ向かうタイプの2種類がある。
『NITRAM』は後者で、20代の青年が無差別銃乱射事件を起こすまでが描かれている。
オーストラリア史上最悪といわれる事件を起こした二トラムと呼ばれる主人公も、最初はいま社会に溶け込んでいる人々と同じところに立っていたのかもしれない。だけど些細なズレが薄布を重ねるように少しずつ蓄積していき、到達してはいけないところまでいってしまった。
分かりやすい異常描写は少ないものの、ズレがズレを呼ぶさまが克明に描かれ、見ている側もジワジワとやるせなさが募っていく。
美しい風景と儚げな映像美が、二トラムの存在を体現しているようで、なんだかまた切ない。
(そして顔に似合わず、白くてぶよぶよとした二トラムの体型と黒いブーメランパンツが焼き付いて離れない…)