ノラネコの呑んで観るシネマ

わたしは最悪。のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
4.4
20代もあとわずかなのに、人生のコンセプトが定まらない女性ユリヤが主人公。
やりたいことも、恋の相手もあっちにふらふら、こっちにふらふら。
誰にでもある人生のモラトリアム期なんだが、彼女の場合はちょっと長い。
頭は良く、自分の問題も把握してるからもどかしい。
一応仕事はしてるし、優しい恋人も切らさないし、幸せなはずなのに、現実の自分の中の拭えない違和感。
果たしてこれが、なりたかった自分なのか?
ユリヤを演じるレナーテ・レインスベが素晴らしく、いい人だけど、ちょっと小狡いところもある主人公を、説得力たっぷりに好演。
基本、踏み出したいけど、踏み出せないユリヤの視点で進行するが、中盤のシーンで彼女が電気のスイッチを切った瞬間、自分以外の時間が止まり、動く物の無い街を彼女が駆け抜けるシークエンスは本作の白眉だ。
男目線ではユリヤに翻弄される話だが、共感力のあるキャラクターだけに憎めない。
思い返せば人生なんて迷いの連続で、ユリヤの生き方はある意味一番正直なのかも知れない。
ヨアキム・トリアーの映画は「テルマ」と「母の残像」しか観てないので、こんなほっこり系も撮るんだと驚き。