A8

コンパートメントNo.6のA8のレビュー・感想・評価

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)
3.4
「くたばれ」が「愛している」という意味になるなんて誰が信じるのであろうか。
不思議なことの連続、それが人生。それを凝縮したのが“旅”なのかもしれない。

主人公は、恋人と遠く離れた北にある遺跡を観にいくため旅に出るはずであった。しかし恋人がまさかのドタキャン、、1人で旅をすることになってしまったのである。
しかも、同客室は礼儀どころか酔っ払いのロシア人青年。幸先があまりにも悪すぎる旅が始まる。

主人公のローラは、恋人に依存しているかどうかは定かではないが、それに近い感情を持っている。恋人に裏切られていると薄々は感じているのだが、やはりそれを受け止めきれないでいた。そんな彼女は、旅を通して、青年との出会いを通して、生きる“意味”を心からの“笑顔”「少しづつ取り戻していく」そういったストーリーが進んでいった。
それと同時に“青年”も主人公のローラに対して最初から興味を抱いており、徐々にその気持ちが恋に変わっていくことがわかる。だけど、彼はどこか影がある雰囲気。
彼が献身的に彼女の望みを叶えようとしたり。途中乗車してきた男に嫉妬したり、絡まれた時に頼りになったり、健気な男とその男の優しさを感じ取った主人公、、すぐに別れがあるとわかっているが、確かな絆が生まれていた。

健気な男と気落ち気味の主人公ローラの旅映画。
大きな展開はないがそれもリアルで良き。淡々と進んでいく旅や、あっという別れ方どれもオーバーじゃないのがよかった。

2人の最初表面しか見えてなかったが旅路において垣間見れるようになった幹の部分、そして“くたばれ”が“愛してる”に変わるほど人間の心は柔らかく繊細にできているんだなと感じた。それは2人が飾らずに真っ裸のまま接しているのかもしれない。そういう人間同士の関わり合いは、であった年月じゃないのだろう。それがとても素敵だった。

“人生は旅”とよく耳にするが、あまりに抽象的だなと思っていた。この作品を観るまでは、、。その“人生は旅”という表現を凝縮したような作品かもしれない。

まだ感情が青い頃までに鉄道旅でもしたいな。シベリア鉄道はどうだろうか。

すこーしビフォアサンライズを思い出す。
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