とらキチ

バケモンのとらキチのレビュー・感想・評価

バケモン(2021年製作の映画)
2.6
ちょうど先月末、鶴瓶師匠の独演会に行ってきまして。そんなことがあった後の今作の上映。こんなの行かないという選択肢は無い!って事で鑑賞。
独演会当日演った演目は「かんしゃく」と「らくだ」。今思うと今作ありきの演目だった気がする(苦笑)。凄かったのがオープニングのマクラというか所謂“鶴瓶噺”。アドリブでエピソードをどんどん繰り出していってると思っていたら、そのエピソードに実際に登場する留守電メッセージや証拠の写真、画像をプロジェクターで映し出してきた事。つまりは打ち合わせ済の計算されたものだったって事。それをあんなナチュラルに話せるなんて、これぞ話芸。そして「かんしゃく」には爆笑しつつも泣かされた。
今作ではそんな鶴瓶師匠の凄さの一端が少しだけ垣間見る事ができる。しかし作品としては焦点がボケボケ。鶴瓶師匠を描きたいのか、「らくだ」を描きたいのかフラフラし過ぎ。鶴瓶師匠が本格的に落語に取り組み始めた時から追いかけているので、一応“落語家 笑福亭鶴瓶”を描きたいのはわかるけど。そして六代目松鶴の弟子として「らくだ」が大事なのはわかるけど、別にこちらは「らくだ」という演目の起源なんてどうでもいい。こちらは鶴瓶師匠の真の人柄、姿、生き様をもっともっと見たいのに。テーマがすぐにあちこちに飛んでしまい全然落ち着かない。落ち着かないといえば、ナレーション。過多。邪魔。担当された香川照之さんには申し訳ないですが。この監督さんどうやらTVのディレクターみたいなので、きっとこれくらい説明過多なナレーションを入れないと安心できないんだろう。でもこちらは映画作品として観に来ていて、しかもちゃんと集中して観ているので、そんな一々説明ナレーションつけなくても観ればわかる。TV番組としても過剰な分量。それに言ってる内容も野暮。TVのドキュメンタリー番組3本分くらいの内容をぐちゃぐちゃにして粗く繋げた、そんな作品。
でもタモリさんの「ブラタモリ」がきっかけで噺を掘り起こして演目に仕上げたエピソードは良かったなぁ。そんな部分をもっと見せて欲しかった。
ラストの謎すぎる「日本チャチャチャ」。あれは独演会の最後に、オリンピック開幕寸前という事で「聖火ランナーやりたかったー!」といってやっていた聖火台点火のパフォーマンス。でも現場では決して「日本チャチャチャ」なんて一言も言ってなかった。何アレ⁈ダサすぎる。
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