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スパークス・ブラザーズのSariのレビュー・感想・評価

スパークス・ブラザーズ(2021年製作の映画)
3.8
約50年に及ぶスパークスの音楽活動の歩みに迫るドキュメンタリー。

アメリカ出身のロック&ポップ・バンド、スパークス。1970年にロン(キーボード)とラッセル(ボーカル)のメイル兄弟によって結成され、主にイギリスで活動している謎に包まれた唯一無二のバンド。貴重なアーカイブ映像やスパークスに影響を受けた豪華なアーティストのインタビューと主に振り返る。

メイル兄弟は、ビートルズをはじめイギリスの音楽に影響を受け、フランスのヌーヴェル・ヴァーグなど映画好きを公言する。

彼らの音楽性は至って独創的で、ジャンルや型に捉われない。劇中で紹介された彼らの楽曲をざっと聴くと、初期はグラムロック風、70年代後期にはパンクを感じさせ、ジャズやオペラを取り入れて、後期のシンセテクノまで様々に変化している。ラッセルの女性のようなファルセットボイス、目まぐるしい曲展開、明るい曲調だが、歌詞が陰鬱な内容だったりと一筋縄ではいかない。例えば、シングルやアルバムがヒットすれば、大衆に迎合し商業主義に陥ることが少なくない。そうすると、自分たちのやりたい音楽ではなくなる。彼らは商業主義に反抗し、独創的な(一般受けしない)音楽を創ってきたアングラ・ミュージシャンなのである。常にマイペースでユーモアを忘れず次のステージへと進化しては自分たちのやりたい音楽を続ける姿勢が格好いい。

インタビュー・パートはモノクロ、アーカイブ・パートはカラー映像で区別し、アニメーションを駆使したテンポの良い編集の妙。監督のスパークス愛をひしひしと感じる。
映画好きのスパークス兄弟は、ジャック・タチ監督と映画を創ろうとして中止になった過去があり、次にティム・バートン監督のアニメ映画の音楽の担当が決まったが監督が降板。イングマール・ベルイマンを題材にしたミュージカルや、近年レオス・カラックス監督『アネット』でようやく夢が実現。タチだけでなく、特に大好きだと語るゴダールのモノクロ映像が使われていて予期せぬサプライズだった。因みに、ビョークは声のみの出演。
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