伏暗

アリスとテレスのまぼろし工場の伏暗のレビュー・感想・評価

2.5
観る前から嫌な予感がしていたが、マイナスの期待は裏切られず、現実離れしたキャラクターと無理矢理ねじ込まれた色恋沙汰がただでさえフィクションめいた物語を心底から茶番にしていた。キャラクターとはなにか。物語の登場人物であり、語り部であり、感情移入の対象である。キャラクター同士の関係性に笑い、涙し、愛おしくなれる。本作は、設定ありきの難解映画ではなく、甘やかで苦々しいジュブナイルであり、ラブの話であり、そして人間の希望と挑戦の話であるので、明らかにキャラクターの強度がなければ成立しない作品である。キャラクターが人間としての肉を纏って、しかしそれだけではまだ人間ではない。何故ならば、人間は肉のままではいられず、臆病で仮面を被り、愛おしさでもって口を塞ぐからである。言うべきこと、言うべきではないこと。真に人間らしいとはどういうことか。脚本が最終的に揺さぶりたかった我々のなかの「なにか」に響かせるために、キャラクターデザイン、声の演技、演出、キャラクター造形、その他あらゆるものが適切だったと思うかを確認したい。手癖や、甘えがなかったか。ただひとつの情動作用を起こすために最善の選択が尽くされたのか。そもそもの主題について、それはラブなのか、あるいは誰と誰に対するラブの話なのか。それは主題になりうる強度を持つのか。そしてまた、物語は常に主体的に選び取られたと言えるか。結末は誰によってもたらされたものか。ストーリー以外に、この物語は誰によって進められたのか。我々は2時間で終わる「まぼろし」を観るために劇場に行くのではない、この人生に深く刺さり、これからも遥か残っていく「なにか」のために揺さぶられにいくのだ。「なに」を残してくれたのか。「なに」が本作において最も素晴らしいものとして提示されたのか。してくれたのか。半分の点数。
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