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アリスとテレスのまぼろし工場のmoobyooのレビュー・感想・評価

4.1
やけに重たい空気が常に漂い、何とも息苦しい閉塞感が全編を通して継続される中で展開される、日本の風土に寄せた変則ジュブナイル風ファンタジーとして斬新な作品です。

製鉄所と共に歩んで来た町の住人達が、その製鉄所の爆発事故で下界から遮断され町ごと閉じ込められ、時間も止まり隔離状態に陥ります。元の世界に戻れた時の歪みを避けるために「変化しない」という選択をした住人に巻き起こる騒動は中学生の子供達を巻き込んで時空が絡む冒険譚に波及して行きます。

主人公である少年の菊入正宗という清酒みたいな名前がずっと気になりますが、彼を中心とした同級生達の性が絡む悶々とした鬱積感にやけに比重が置かれ、明らかに子供向けのアニメーションでないなと思って観ていましたが、後から本作の岡田麿里監督は、それぞれ実写映画版の『暗黒女子』『惡の華』の脚本を書いていた方のオリジナルストーリーと知り腑に落ちました。

マルチバース要素も絡めて、後半は怒涛の展開になるので予想以上に面白かったです。あまりお客さん入ってないようで勿体無いです。自分としては今年観たアニメーション映画で今のところ一番面白かったです。
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