moleとはモグラのことであり、転じてスパイという意味になった。
この映画は『ザ・レッド・チャペル』の監督、マッツ・ブリュガーのもとにデンマークの料理人ラーセンからメールが届いたことから始まる。先述の作品を作ったことで北朝鮮への入国ができなくなった監督の代わりにラーセンが潜入し、実情を報告をするというのだ。
この映画の醍醐味は頼りなさげな素人スパイが大胆にも北朝鮮へ潜入し、実際に外交を行うまでの様子がドキュメンタリーとして収められている。
詐欺師に見える詐欺師はいない
という言葉があるが、スパイに見えないスパイほどスパイとして高スペックなものはない。
町山さんが割とポップにこの映画を紹介していたので、もう少し遊びがある映画なのかと思いきや、想像の遥か上を行く本気のスパイ活動で、当たり前ではあるが家族をはじめとした多くのものを犠牲にして任務を全うしていた。
映画はスパイ活動がバレてしまいそうなシーンが多々あり、スリル感満載でした。割と無計画に事を進めるシーンもあり、もっと入念にやりなさいよ、とツッコミたくなることもしばしば。
ヨーロッパの人々がなぜ北朝鮮へ傾倒するのかといった件はなるほどと思わされるものであった。世界的に見ても時代不相応なまでに共産主義を貫いている北朝鮮に救いを求める人もいるのであろうということは想像できるものであった。