かこ

The Son/息子のかこのレビュー・感想・評価

The Son/息子(2022年製作の映画)
4.0
🖋️
【愛情だけではどうにもならない。埋まらない心の距離をどうする…?】

9/13からレンタルスタートした本作は、
フロリアン・ゼレール監督による家族3部作「ファーザー」(2020)に続く第2弾。
人生に絶望を感じ、急性うつ病を患う息子の気持ち、それとどう向き合っていくか、家族の戸惑いと困難が描かれています。

タイトルが「The Son 息子」となっているので、息子ニコラスの話しをしなければ…と思うけど、ほぼ父親のストーリーとも言える?

まぁとにかく、ポスターからはとても想像できない結末で、何故⁈という思いが観賞後も頭を巡りました。

物語は前妻ケイトとの間にできた息子ニコラスの登校拒否等でケイトが手に負えなくなり、ニコラスが父親ピーターの家に住むことから始まる。
因みにピーターは不倫の末にケイトと離婚しリズと再婚、子どもが産まれたばかり。職業は一流弁護士です。
ニコラスは父親に捨てられ、母親と共に人生をボロボロにされたと思っている。

正直この手の映画はレビューするのが難しいのですが……

親子の距離感は難しい。
何か問題が起こるたびに、親として一番いいと思う方法で寄り添えば、内容が伴ってなくても子育てをしているという安心感や親のエゴが生まれる。

登校拒否を起こしても転校させ、セラピーを受けさせれば良くなると信じるピーター。
他ではそれで改善した前例があったとしても、自分の子どもに対してはまた別で、同じ事の繰り返しでもいつも初めて、前例なんて無いに等しいし、根本的な解決にはならないと思う。

それに痛みを感じるときだけ生きてる感覚があるからと、自傷行為を繰り返すニコラス、その気持ちが全くと言っていい程 理解できないピーター。

ニコラスは自分がこうなった原因は父親の不倫や両親にあると伝えたいが、上手く伝えることができない。
……伝えたところでピーターには理解できないだろう。

一方でピーターもアンソニーホプキンス演じる父親との間に、40年前の母親の死をキッカケに大きなミゾがある。父親を良く思っていない、それを埋められないまま結婚して父親になった。

久しぶりに再会した父親がピーターに、自分は良い親だとアピールしに来たのか?
40年も経ってもなお10代の頃の感情を乗り越えられていない!と言ったのが刺さる。
自分も父親との間に課題があった訳だ。

その過去が原因なのか、
理想の父親像、理想の子ども像というのが出来上がり、ピーターを頑固にさせていたのかもしれない。

それに弁護士としてのプライド。
弁護士は人に頼られ、人の話しを聞いて弁護をするプロ。それなのに何故息子にはそれができなかったのか。
まったく話しを聞かなかった訳ではないけど、どこかビジネスの延長線と捉えていたように思えた。

話しを戻して
遂に言ってはいけない言葉をニコラスに放つピーター、過去の自分と比べて自分の時はこうだった!お前のために尽くして結婚生活を続けた、他の人を好きになる事が罪か?俺の人生にも権利がある‼︎とニコラスを捲し立てる😩

さらに人生の絶望を味わい、
急性うつ病と診断されるニコラス(急性ではないよね泣)
私の主観だけど、自傷行為を繰り返す彼はとにかく"死にたい"のだと思った。

精神科医は多くの患者を見てきているのだから任せるのが一番だと思うが、帰りたいと泣いて懇願するニコラスを退院させ、目を離さないようにするなんて……。
親の自己満足でしかない🤦‍♀️

………ラスト、私たちは悲しい伏線を回収することになる。

子育ては何が正解で、何が不正解なのかわからない。
親も子も完璧な人は居ないし、愛情だけではどうにもならない事もある、本当に難しい。

重いけど、親として考えさせられた映画です。
観るのが怖いけど家族3部作のラスト
「ザ・マザー」の公開が待ち遠しい。

余談ですがタイトルの「THE SON」は息子としての自分、そして父親になり息子を持った自分を意味しているのかな?と捉えました。
かこ

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