かこ

春に散るのかこのネタバレレビュー・内容・結末

春に散る(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

🖋️
【一瞬だけを生きると決めた、男たちの熱い物語】

制作会社様の試写会にご招待頂き、
映画『春に散る』を鑑賞。

【出会いと再起を図るきっかけ🥊】
40年振りに突然帰国した広岡は何を成し遂げようとしていたのか?
実は広岡は心臓に病を抱え、いつ心臓が限界を越えてもおかしくない状態だった。が、残りの人生に再起を図ろうとする自分がいた…とても複雑な心境だ。
かってのボクシング仲間を訪ね今後のことを相談するも現役時代とは大違い、隠居生活。他にも兄の訃報や老朽化した兄の家など、40年振りに目の当たりにした現実に広岡はショックを受けたに違いない。その様子を言葉少なく、背中や表情、雰囲気で演技をする佐藤さんが素晴らしかった!

そんな広岡の前に現れたのがボクサーの黒木翔吾。彼もまた不公平な判定負けに怒り、ボクシングから退いていたが広岡と出会い、もう一度ボクシングに賭ける決意をする。翔吾の思いに「俺は先は短い」と病を理由に消極的な広岡に対し「俺も今しかない」と燃え尽きたい衝動に駆られ、食い下がる翔吾。
ふたりの思いは対比していたが、やがてボクシングに命を賭けようとするふたりの思いが一致する。

広岡と翔吾が直接試合をするシーンは無い。でもボクシングに対する情熱がスクリーンを通して伝わってきた。交わす言葉や視線、それぞれのプライドがぶつかる様子は、ライバルでもあり、仲間同士の戦いにもみえた。それに親子にも見える。翔吾は幼い頃に出て行った父親に広岡を重ねていたのかもしれない。ふたりの熱意は周囲の人も巻き込み、更に熱いパワーを巻き起こして行った。

【リアルを追求したボクシングシーン🥊】
試合中、相手から何度パンチを貰っても「面白い!」と楽しむ翔吾は生き生きとしていた。

何と言ってもそのボクシングシーンが最大の見どころ、と言っても過言ではない。翔吾と中西(窪田正孝)のタイトルを賭けた試合は緊迫感と臨場感、佳菜子や翔吾の母親(坂井真紀)など、人々の思いを乗せて、一瞬たりとも目が離せなかった!!思わず息を呑む、とはこういう事だったのか!!
現役選手のように絞り込んだ身体に、よくカメラが追いついたなぁと思うほど素早い動きはとても演技とは思えない。覚悟を決めた男たちの全てを感じることができて、もう感動しかない!!とにかく、よほどの信頼関係がなければあのような本格的な試合のシーンは撮れないのでは?気付いたら私も拳を握りしめていた。

【春に散る🥊】
映し出されるシーンがタイトルとリンクし、今までの熱い戦いが嘘のように静まり返る。何を思い浮かべていたのか?きっと自分を縛るものが消え完全燃焼したのだろう、広岡はとてもいい顔をしていた。そして翔吾と佳菜子、ともに戦った仲間たちも次に進む。

「一瞬だけを生きる。」

突然のコロナ禍で先の見通しが立たなくなった時、普通に生活できると言うことは、当たり前ではないという事に気づかされた。だからこそ、この一瞬が大切、そんなことがこの映画と重なった。

長い人生のうち、一瞬でも濃厚で後悔しない生きかた。広岡と翔吾の情熱に心動かされ、前向きに進もうと思わせてくれる映画でした。

他のキャストの方々も豪華。今作が実写映画27年振りの出演となった山口智子さん、今やボクシング映画に欠かせない松浦慎一郎さん、翔吾の対戦相手役の窪田正孝さん、片岡鶴太郎さんなど主役級の優陣が名を連ねる。

ぜひこの熱い熱い戦いを劇場で観て頂きたいと思います🥊🔥
かこ

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