タカシサトウ

The Son/息子のタカシサトウのレビュー・感想・評価

The Son/息子(2022年製作の映画)
3.0
(鬱映画なので、観る人はお気を付けください)。


 ピーター(ヒュー・ジャックマン)の息子ニコラス(ゼン・マクグラス)が高校を不登校になり、元妻ケイト(ローラ・ダーン)と共に心配するが…、という話。

 (以下、全面ネタバレしています)。



 息子ニコラスが、自分は、父が浮気(?)して家を出て行き、それが、母と自分を傷つけた、と言うが、ピーターは、それが不登校と繋がっているとは理解できない。夫婦のトラブルや離婚は、子供は、自分が悪いせいだと思いがちで、その為、ニコラスは自分のことを責め続けていたのかもしれない。

 また、ピーター自身も、自分の父親(アンソニーホプキンス)に放任され、期待され、罵倒され続けたトラウマがあり、それと同じことをニコラスにしてしまい、追い詰めてしまう。自分が育てられたようにしか、子どもにも接することが出来ない、ということを無慈悲にも突き付けて来る。

 映画は、父ピーターのことが中心なので、ニコラスのことはあまりはっきり出てこない。彼が不登校になり、鬱病になり、遂に死んでしまったのは、余程の苦しみがあったのだろう。母と暮らすようになり、母とうまく行かなかったのは大きかったと思う。父の所でも、何度も、リストカットもしていたし、余程の苦しみがあり、早く入院すべきだった。

 変だったのは、父が、母と自分を傷つけたことで、父を恨んでいた筈なのに、母の所を出て、父の所へ行く。ここは、何だか理解できなかった。

 ニコラスは、本当に苦しかった筈かと、そして、親にとって、子供の死程辛いことはないだろう、それでも、人生は続いて行く、救いのないラスト、いたたまれない。

 最後の、もし、ニコラスが生きていたら、というピーターの白日夢も、何だかあざとくて嫌だった。ピーターは、もっと見てやればよかったと言っていたが、それは、間違いで、彼のことをもっと分かる必要があったのだろう。もう少し描き方があったのでは。 

 唯一良かったのは、俳優で、ヒュー・ジャックマンも、ピーターの妻のヴァネッサ・カービーも、アンソニー・ホプキンスも非常に上手かった。また、ゼン・マクグラスもローラ・ダーンも悪くなかった。

 フローリアン・ゼレール監督作としては、「ファーザー」の方が納得しやすく良かったと思う(2024.4.7)。