YasujiOshiba

ミラベルと魔法だらけの家のYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

ミラベルと魔法だらけの家(2021年製作の映画)
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U次。なぎちゃんと。魔法はギフト。自分の力じゃない。ただ与えられているだけ。だから失われる。奪われる。わかっているから守ろうとする。守ろうとすると逃れてゆく。

だからギフトは貨幣に似ている。退蔵は死蔵。使わなければ意味がない。使い過ぎるのも困る。結局のところ、その本質と意味は、所有ではなく使用にある。使用する生き様にある。ギルトを使ってどんな生の形式をつくるか。

砂の家なんだよね結局。どんどん崩れてゆく。だからどんどん補修する。生物の細胞と同じ。崩れては補修し補修しては崩されてゆく。けれども、その家を作る営みのなかに生の形式がある。家は使用のなかで永遠の形を保つのだけど、所有されたとたんヒビが入りはじめるというわけだ。

その所有をめぐる最悪の営みが戦争だ。戦争ってやつは所有をめぐる争い。この映画が着想を得たのはコロンビアで、1899年から1902年までの約3年間にわたり、ほぼ千日戦われた「千日戦争」(Guerra de los Mil Días)だという。

それは内戦に始まり、アメリカの政治的・軍事的介入を招き、1903年のパナマ独立をもたらす。コロンビアは、実質的に強国の裏庭として所有され収奪されてしまうわけだ。

だからこの話、あえて強引に読めばディズニーのアメリカ批判だけど、アメリカの悪事を隠しているようにも見える。そうは言っても、気になるシーンはちゃんと気になるように入っている。見つかるところにヒントはある。調べるとすぐわかる。

だとすれば、この作品、そんなスーパーパワーへのスーパーパワーによる反抗の物語と読めばよいのだろうか。そしてパワーとは、所有してしまうと腐ってしまうという警告。だから大切なのはそれをいかに使うか。あるいはいかに使わないでおくか。結局のところ、所有ではなく使用が問題になるというわけだ。

魔法を持たないというギフトを与えれたミラベルちゃんの活躍を堪能しながら、ぼくはそんなことを考させられたというわけです。それから全編を通して音楽がよい。おおわずノリました。リズムとってしまいました。魅了されました。

そういえば原題は「Encanto」。なるほどそのあたりが「魅力」だというわけですな。
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