HicK

私ときどきレッサーパンダのHicKのレビュー・感想・評価

私ときどきレッサーパンダ(2022年製作の映画)
3.6
《心地悪い前半と気持ちいい後半。
結果、面白かった 笑》

【お母さん=ディズニーヴィラン】
最初は意識高い系13歳女子と、まったく正しく無い、共感の余地も無い現実離れしたお母さんの設定にいまいちハマれなかった。特にお母さんは人種差別にも近いセリフも。ナプキン見せるとかぶっ飛び過ぎて、お母さんのシーン全てがメイの見た悪夢なのかとさえ思った。しかし、お母さんとして見るから説得力の無さに腹が立つだけで、最初から"ディズニーヴィラン"としてみれば、意外と魅力的で面白い。

【3幕目がカオスで好き】
とにかく終盤のトンデモ展開が好きだった。もう、ここまでくると母は本当にディズニーヴィランなので、ようやく割り切れてとても気持ちよかった。清々しい。そう考えると、今作は「妙にお母さんのような存在感があるヴィラン」と、「ヴィラン家系に生まれながらも正義に目覚めた勇者」の戦いという話なので、とても熱いものがある。…(笑)。やはり短編「Bao」でも今作でも、ドミー・シー監督にとって母は"大きな"存在なのだろう。

【思春期を受け入れろ】
主に「イラッと」「ムラっと」すると出現するパンダ。その興奮を、「抑える」でも「出す」でも無く、『受け入れる』というのが、妙に共感できた。大人になった今でもイラッとした時に無理に抑え込まずに、「イラッとするよな」と心の中で肯定すると少しコントロールできたりする。思春期に限らず、怒り、不安、緊張など負の感情を受け入れるセルフマネージメントにも近いテーマ。

【ウケるコメディー】
寒いものとウケるものに別れてしまったが、驚くことに"キラ目"のしつこさが自分には機能してしまい、笑わされた(笑)。その他もボソッと言うセリフが面白く、実写コメディー作品のような歯切れの良さ。結果的にめちゃくちゃ面白かった。特に紫のカチューシャの子。

【寒いコメディー】
一方、寒かったシーンの原因を考えると、上手く言えないが、感情を大げさな行動で表したり、ハイテンションで別方向に飛んでしまうような表現は、アニメを模したような演出で、そもそもアニメ的表現と相性の悪い自分には合わなかったのかも知れない。で、良く考えれば母の存在もどこかアニメに近い誇張の仕方だった。

【総括】
全体的に笑える要素が多く、ドタバタコメディー色もある今作。意外とここまでコメディー的エンタメに振り切ったピクサー作品は無いように思う。心地悪い序盤にくらべ、気持ちいい後半がとても魅力的だった。結果的に作品の印象が良くなり、驚くことに「面白かった」という感想で見終われた。
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