しょう

沈黙のパレードのしょうのネタバレレビュー・内容・結末

沈黙のパレード(2022年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

映画原作未読。
直前の2時間ドラマ含め、これまでのドラマ映画ともに鑑賞済み勢です。

今回の映画は、完全に湯川先生ではなく、草薙さんの物語でした。
これまでのイメージは、刑事を仕事として割り切って捉え、プロフェッショナルに取り組むイメージでしたが、今回は「人間」草薙の部分がかなり強めに出ていたかと思います。

湯川先生に掻き回されることはあっても、事件の中で、あそこまでもがき苦しむ姿は見た記憶がなく、今、映画を思い返しても、苦悶に満ちた草薙さんの表情が頭を駆け巡ります。

そういう側面で考えると、湯川先生も今回は「人間」の部分が大きかったかもしれません。
事件の「現象」への興味ではないところで、積極的に事件に関わっていったのは、常連客であったことよりも、草薙さんの苦しみに何か思うところがあったからでしょうか。

ちなみに、今回、草薙さんの映画と思ったもう1つの理由が、「天才物理学者」の湯川学は、この事件の「現象」解決に不可欠ではないと思うからです。
確かにトリッキーな殺害方法であり、湯川先生の力によって、解明が早く進んだとは思いますが、いずれ解き明かせたレベルな気がしています。
(そういえば、今回を含め、雰囲気が合わないので、映画にはドラマおなじみの数式書き殴りシーンがないですね。)

むしろ必要だったのは、内海さんのセリフにもあったように「親友」湯川学だったと思います。

話を内容面に移すと、裏の裏まであり、二転三転する展開はなかなか見物でした。
この辺りは役者さん方の力が素晴らしいなと感じました。

ただ、作者の狙い通りかもしれませんが、カタルシスはあまりなかったです。
ガリレオの映画作品は、見終わったあと、ざわつきがいつも胸の中に残ります。
それは、「本当にこの結末しかなかったのか」ということに対するモヤモヤだと、自分の中では認識しています。
特に今回のように「誰かが誰かをかばい…」系は、気持ちのすれ違いみたいなものが、必ずといって良いほど起こるので、よりモヤッと感が拭えないのだと思います。

まだ、自分の中には、その不条理さを受け入れる器がないのだなあと実感するばかりです。

久しぶりの新作、映画にするほどのスケール感はないものの、閉じられた暗い空間で、2時間10分ぶっ通しで見ることで、心の暗いところに刺さるものがありました。
ある意味、映画の醍醐味は味わえたかなと思います。

そして、既に次回作を期待してしまっている自分がいます。



それにしても、草薙さん、というか北村一輝さんがカッコよかった。
しょう

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