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クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲のtubameのレビュー・感想・評価

4.3
大人って何だろう。

どうしたら大人になれるのか意見は様々だろうが、はっきりしているのは、徒に歳を重ねても大人にはなれないということ。社会に押し出されたり自分より年少の者が増えたりするにつれ、気が付けば仮面を被り【大人】の振りをしていたという人が多い気がする。

でも、心はまだまだ子供のまんま。そういう人間にとってオトナ帝国は大人の現実・重圧から自らを隔離する魅力的なシェルターになる。オトナ帝国に執心する人々の言う「あの頃」とはひどく曖昧な言葉だが、背景の違う人間それぞれの「あの頃は良かった」という抽象的な感情が作り上げた世界だということを良く顕している。自分に都合のいい「あの頃」なんて昔も今も本当は存在しないのだ。敵のバックボーンがほぼ語られないのも、彼らが不完全な【大人】の化身にすぎないからだと思う。

ノスタルジーに浸る人々への強烈な問いかけを子供向け映画の中で描いたことは革新的で、本当に参りましたとひれ伏すしかない。

しかし最も感動したのは、ヒロシが子供時代~現在までを走馬灯の様に思い出す場面だ。決して華々しくはないがしかし確かに歩んできた過去、その積み重ねが作ったささやかながらも幸せな今。時が止まったままのオトナ帝国では絶対に手に入らないもの。大人になって何かを失ったからこそ、手にしたもの。
ヒロシは誰しもがオトナ帝国なんかには代えられない大切なものを持っているはずだし、大人になるのも素晴らしいことなんだよと教えてくれる。

ラストのしんのすけの「大人になりたい」という言葉にじーんとした。
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