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THE FIRST SLAM DUNKのシネラーのレビュー・感想・評価

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
3.5
バスケ漫画の金字塔。
人生で初めてコミックスを全巻揃え、
TVアニメも幾度と視聴した作品であり、
製作発表から楽しみで仕方がなかった
「SLAM DUNK」の完全新作を
令和の世に劇場鑑賞。

本編レビューを綴っていく前に、
本作の公開に至るまでのプロモーション
に関して綴らせて頂くと、
公開1ヵ月前でのTVアニメ版からの
声優変更の公表、
内容を全く明かさない予告、
断片的な本編のCG映像、
これらのプロモーションは
正直言って不安しかない流れだった。
しかしながら、
愛している漫画の新作映画である事に
変わりないはないので、
その不安の払拭の為に劇場へ赴いた次第だ。
結果として、
待ち望み続けていた試合の映像化に
新たな物語が追加された
「SLAM DUNK」で面白かったが、
これで良かったかと問われると
否定的になってしまう内容だった。

本作の主役は桜木花道ではなく、
同じ湘北高校の宮城リョータを
主役としており、
彼視点での過去回想と同時並行で
試合を描くものとなっている。
そこで原作では語られなかった
リョータの家族描写や三井との過去は
新鮮さもありつつ、
良い後付けではあると思った。
試合場面に関しても、
リアルな音やスピード感を感じさせる
試合中のプレーが良かった。
特に原作での名場面となる攻防は、
分かっていても好きな場面だった。
気掛かりではあったCGも違和感なく、
コート上で全員が動く様は
CGならではと思った。
キャラクターのアップ絵も悪くなかった。

しかし、原作を知っていると
端折られた場面が特に試合前半は多くあり、
後半も後半で同様な部分が少なからずある為、
原作のダイジェスト映像を
観ているようで残念ではあった。
大好きな名場面も簡単に描かれていたり、
その場面自体が消されているのも
首を傾げる部分だった。
又、リョータの回想場面を試合の合間に
挟んでいく構成となっている為、
物語の停滞やテンポの悪さを
思わない訳ではなかった。
リョータの過去と試合を合わせた事で
新たな「SLAM DUNK」
を築きたかったのかもしれないが、
唐突な部分もあるだけに回想部分は
退屈にも思う部分が多かった。
結末も余計な蛇足としか思えず、
何故にリョータがそんな環境にいるのか
疑問ではあった。
そして、ファンの皆が大好きであろう
試合ラスト数十秒の展開だが、
個人的に20年以上も頭の中で描いていた
イメージを上回るものではなかった。
加えて、本作は新規ファンの為にも
製作されていると思うが、
いきなり最終回を見せるような内容で
良いのかとも思った。
花道と流川の名場面が、
薄味な感動になっていて残念だ。

待ち望んでいた試合は見られたが、
それで胸が熱くなるものは少なかった。
逆にこのクオリティでの継ぎ接ぎの
映像化で良いのかと虚しくなった。
最も悲しいのは、
本作の監督・脚本を務めているのが
原作者である井上雄彦先生な事だ。
内容自体はよく知っている故に
好きではあるものの、
あの試合は涙を流す位に
もっと感動できた筈だ。
原作における集大成となる試合が、
今の井上先生の描きたい事によって
添え物にされたと思えてしまった。
本作が好きだと叫びたかった。
感情的で申し訳ありません。
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