イベリー子豚

アステロイド・シティのイベリー子豚のレビュー・感想・評価

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
4.1
「オリジナリティの極み」
「オフビートでチルいのに」
「情報量とテクニックで
理解力を一生、周回遅れにさせる」
「唯一無二の領域展開型【アンダーソン】ワールド」




やっぱりね。

【アンダーソン】くんは
世界で4人目の「特級呪術師」だったんだね。


お見事です。


さらに、ここに来て
「3Dを2次元に閉じ込める」という
門外不出・一子相伝(?)・最終奥義が完成形へ。


まるて全編を通して
「一枚の超巨大絵画を俯瞰で眺める」ような錯覚。


「お得意のミニチュア」や
「無機質でコマ送りの演技プラン」
「固定スライド・カメラワーク」だけじゃなく
「ストップモーション・パペット」まで融合し
テキサス生まれの『SAND LAND(サンドランド)』は
渾然一体の「エリア51」に姿を変える。


果てしてコレは
「寡夫と女優の『ラ・ラ・ランド』」だったのか。

もしくは「天才キッズと『未知との遭遇』」?

はたまた
「制作現場にも密着した舞台版『北の国から』」
とも言えるのかな。


個性をフル活用した
自由自在な圧倒的センスと
それを再現してくれる豪華絢爛な俳優陣と
超一流の現場スタッフ。

映像のポテンシャルをどこまでも引き出す編集に
期待と想像が膨らむ予告編・広報活動。


「月イチ劇場の初心者」も
「三大配信(N、U、A)完備・週イチの中級者」も
「過去作コンプリートの上級者」でも
「名作・古典への造詣、映画史にも精通した・
もはやご本人レベル=Mr.アンダーソン」にも

それぞれ
違った深度で物語を楽しませてくれます。



ただ……
一つ、最大の問題がありまして。



「番宣番組風ストーリーテラー」+
「舞台演劇」+
「その制作の裏側」というのは
確かにユニークなんだけど、
今回は特に
「めっちゃ変なところ揉んでるけど
いったい、どこにどう効いてるマッサージ??」
なんだよな。


「原爆実験」
「ペールカラー」
「第三次遭遇」
「当時のショービズ業界」


時にさりげなく
時に大胆にちりばめらた、パズルのピース。


まるっと一本「雑誌」を具現化した
『フレンチ・ディスパッチ』よりも
素人にはその凄さ、意図が伝わらない。


「前作以上に(感動しやすい)劇的な構成」が
なかったのは
(常人では理解出来なかったのは)
残念でした。



『グランド・ブダペスト・ホテル』新規の
イベ子風情はまだまだ
その「高み」に辿り着かしてもらえないのです。


だから
「よく分からないけど多分、
イヤ、きっと……面白い……ハズ」なんて
脳みそがハッピーなバグを起こしちゃうのでしょう。


ってか単純に
前回の方がめちゃくちゃ好きだった、
ツボにハマッた、だけなのかも。


いずれにしても
「初期」「中期」「後期」「最新作」なんて
簡単なカテゴライズで分けさせてくれるほど
「アンダーソンくん」は甘くない。


時間があればパンフレットと併せて
「POPEYE 特集号」もゲットしたいところですね。