トモ

余命10年のトモのレビュー・感想・評価

余命10年(2022年製作の映画)
4.6
余命10年

余命ものは好んで観ないけど小松菜奈さん&坂口健太郎さんの最高キャストと藤井道人監督×脚本岡田惠和さんのタッグが気になり観てきました

涙を誘うでもなく主人公の心情に対してとても真摯で繊細。命の限りを知った彼女の葛藤が辛く尊い☆4.6

以下ネタバレ有り



余命を知る彼女の生きる執念と普通の生活を送りたいという願いが至る所に表れていて、主治医の先生との対話、処方、食生活を守ること、病気を隠すこと、できる限り楽しむこと。命を粗末にする人に嫌悪感を示すこと

人に気を遣わせたり優しさを素直に受け入れてしまうことで死を意識したり他とは違うという辛さ、自分の弱さに対しての彼女なりの予防線に思える

就職活動に際しての現状や家族に必要以上の労力を強いてしまっている後ろめたさ。感情的になって裏腹な言葉を発してしまう

「余命10年て長いか短いか分からないよね」って台詞が明日にでも奪われてしまう命、自分より辛い状況への対比で発した言葉なのかは分からないけど、常に揺れ動く彼女の心情が辛い

本当に死を覚悟したかのような先生との会話もそうだけど、病室でメモリを消去するシーンが一番泣きそうになった

冒頭で身近な人の死と向き合った彼女。思い出を残すことに何の意味があるのか、幸せな思い出が彼女にとって何よりも辛い、それは彼に対する思いの変化もそう

あれだけ避けられてしまえば普通なら諦めてしまいそうだけど、生きる道を見いだしてくれた彼女はかけがえのない存在だし、説得力ある「愛する人に出会える奇跡」というある人の台詞

本当に幸せだったのかは彼女にしか分からないけど、生きることを強く願い人の温もりに触れた彼女は輝いていたように思えるし、生きる価値を時折見失いそうになるなかで彼女の生き方はとても尊く思える

自分はエンドロールで初めて知ったけど、作り手の真摯な向き合い方の意味が納得できたし同時に小松菜奈さんの重圧も相当だったと感じる

小松菜奈さんは作品毎に格段に素晴らしくなっている。器用にではなくとても自然に。難役だろう今回がベストだし、個人的には今年の優秀主演女優候補

坂口健太郎さんはあまり見かけない新鮮な役柄だったけど外見と心情変化が細やかでとても良かった

そして二人を捉えるアングルが最高だった

黒木華さんとか奈緒さんとか松重さんとか原さんとか哲司さんとかフランキーさんとか脇が締まりすぎて最高の映画でした
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