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余命10年のnt708のネタバレレビュー・内容・結末

余命10年(2022年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

良いところはたくさんあるのだが、120分の映画としてはどこか物足りない印象。原作を読んでいないので何とも言えないが、映画だけを観た身として違和感を感じるのは話の展開が恋愛模様に終始しているところ。余命10年という限られた時間を生きる主人公にとって恋愛模様と同等に大切なものがあるはずであり、それが少しずつ失われていく様がほぼ描かれていない点がどうも腑に落ちない。

例えば、彼女にとっての家族の存在。生きたいけど生きられない、、それでも生きていてほしい。そういった家族の気持ちとその気持ちを誰よりも分かっている主人公だからこそ生まれる葛藤や共感があったはずであり、それが本作ではあまり触れられていなかったことが残念でならない。家族とのつながりを描くことで、恋愛模様だけでは描き切れなかった10年という時間の長さあるいは短さを痛切に表現することができたのではないだろうか。

世間の評価があまりにも高いため、大いに期待し、私自身も泣く気満々で劇場に足を運んだのだが、残された時間を生きる人々の恋愛映画としては良くある展開であまり楽しめなかった。どうやら原作との違いも大きいようだし、それだけに本作はもっと良い仕上がりにできたのではないかと考えてしまう。この世を確かに生きたひとりの人間の記録をもっとパワーを以て表現してほしかった。
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