めしいらず

余命10年のめしいらずのレビュー・感想・評価

余命10年(2022年製作の映画)
2.9
お話は難病ものの雛形通りのものであるのだけれど、過剰にお涙頂戴に走りがちな凡百のそれとは違って、あまり感情的にならない静かな演出で落ち着いて観ていられる。儚げな小松菜奈のナイスキャスティング。難病の娘を抱えた家族のありようもリアルでとてもいい。10年という長いとも短いとも言えそうな余命宣告が、不治の病にいつか医学の進歩で治るかもと淡い期待を心のどこかについ抱かせてしまっただろう分だけ却って残酷であり、この類いの映画の中でユニークな印象を受ける。残酷だけれどもその時間があったからこそそれぞれがどうすることも出来ない現実の圧倒的な悲しみの中にあっても、そこに前向きな心の方向性を見出すまでの時間もまた積み上がっていくようで、悲しくも優しい人への眼差しを感じた。
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