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イノセンツのSUのネタバレレビュー・内容・結末

イノセンツ(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

台詞で多くを語らず映像と音で魅せ解らせ真に迫る芸術はもはや暴力的でさえありこの感覚は紛れもなく愛しい北欧スリラーであった。
子供が純粋な好奇心のみで実行することは往々にして残虐であり、もしも彼らが強大な力を手にした場合、その純真さ故に容易に他者の命を脅かす存在になるという危険性が強く示され恐怖を煽られるということなのだが、この映画で終始漂う不穏な空気はそれだけにはとどまっておらず、例えばイーダの母が「引っ越し早々旅行に行っていたら周りから何を言われるかわからない」という発言や、愛が無さそうに見えるベンの家庭、良い母に見えるアイシャの母が常日頃から隠れて泣いていたりなど、ノルウェーという幸福度の高さに定評がある国というイメージとはかけ離れた不幸せが多々描写されておりそういった国の本当の姿を表しているという事にも起因している。
またイーダが、「アンが言葉を少し喋れる様になった」と母に報告するも母は冷酷な程に話を聞こうとも信じようともしない。そんな人間に超能力云々の話など打ち明けられるわけがないし、それが北欧ならではの生き辛さが生んだ歪な親の姿とも考えられるわけで、そんな親から漏れ出す負の因子が子にストレスを蓄積させ人間の攻撃性を育むことでベンの様な子供が出来上がってしまうのではないか。
スケールを広げて考えると世の中子供の問題行動や事件は得てして大人の目の届がないところで発生するが、親子のコミュニケーションが十二分にとられていれば違和感を早期に感じとることができ大概は防げる筈なのだ。それだけで全てが解決するわけでは勿論ないが基本の心構えとして是非とも大人である親の方が子供に寄り添い愛を以て真摯に向き合って欲しい。(誰)
裏返る国のイメージや純粋無垢が転じて残虐となる子供の姿はキービジュアルのデザインや、エンドロールが下から上へ流れるという逆転のイメージへと繋がっており秀逸。
超能力バトルはと言うとSFやファンタジー要素皆無の非常にリアリティのある表現となっており素晴らしい塩梅で内容にマッチしていたと感じた。
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