このレビューはネタバレを含みます
内なる敵
20余年前に失踪した奥さんを忘れられない建築家のお話
忽然と姿を消し、思い出だけが頭に残ったまま
まさに"ロスト・ボディ"というわけ
運転手の怪訝な顔
第三者が決して介入してこない空港での掛け合い
ターミナルのミニチュアに染み出す朱色
ヒントとなるようなものが、全体的に散りばめられている
今、話している正体不明の女性が何者か悟る頃には真相が顔を覗かせている
1、不快な話
2、恐怖の話
3、愛の話
順番に語られる思い出話は何を示唆しているのか?
答えに直結するような話ではないが、ミステリアスかつデンジャラスな雰囲気たっぷり
「何も足せない状態でなく、何も削れない状態」
深層心理なのだろう
妻を殺めた記憶は上塗りできず、忘れ去ることもできない
そういうことだ
シーソーのパワーバランスが真実に傾いたなら
たちまちドロドロのセメントに絡め取られる
点をばら撒いて最後に線をつなげていく構成なので、1回だけじゃなく複数回観たくなる
ファンタスティックセレクションにめずらしい本格スリラーだった