SSDD

ある男のSSDDのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
4.3
◼︎概要
田舎町で暮らす親子。夫が事故で他界し、遺族を呼ぶのだが死んだのは家族ではないと伝えられる。
果たして自分が過ごした相手は誰なのか…。

◼︎感想(ネタバレなし)
ずっと観たかった作品、Netflixで配信されたのですぐに視聴しましたが、想像していた作品ではなかった。
しかしいい意味で期待が外れ、何層にも重なる重みのあるシナリオだった。

一体何者なのか?を問ういい作品でした。
本作も前情報なしで見てもらいたい作品です。










◼︎感想(ネタバレあり)
・一人の身元がわからない男を通して問われる
主人公が移り変わる作品としてなかなか秀逸であり、未亡人となった女性の視点から、調査している弁護士に移り変わるのは予期していなかった。

在日であることで他人から受ける差別言動を見て、自身の在日3世であることの枷。妻の家族や妻から受ける自身への期待。

戸籍まで偽り自身の人生をやり直したかった二人の男を通して"自身は何者なのか"に疑問を持つ、バーで他人を演じてみるものの実際自分はどんな人生を歩めたいのだろうとわからなくなるラストシーン。

なかなかの秀逸さでした、他人の偏見というものは生まれた際には逃れられないものであっても蝕まれてしまうことに三人の男を通して見せるシナリオは素晴らしい。

・詐欺師
詐欺師の戸籍のロンダリングをしていた男。
相手を見透かして食うような態度だが、相手の思考を読むことも記憶力も長けた化け物じみている。
柄本さんの怪演が素晴らしかった。喪黒福造並みのホラー演出は、長い刑務所の廊下や無機質な面会場所などしっかり土台が形成してからなので末恐ろしくさえ感じれらる。

・総評
人はあらゆる枷を背負っています。望もうと望まないだろうと、まるで生まれた時からの原罪であるかのごとく物心がついた時にはそれを感じ始める。
親の期待、環境、同世代の友人や知り合い、社会…すべて比較され自身がどうあるべきかを刷り込まれ、レッテルを貼られ人格を形成していく…。
逃れられないものですが、全て精算するには誰にも知られないように全ての過去を捨てることができれば他人になれるのでしょうか。

そんな人間の原罪、呪いのようなものを深く描く恐ろしい作品でした。
SSDD

SSDD