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ある男のsoutaの映画まとめのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
4.2
【soutaの邦画つぶやき No.543】
"ある男"


宮崎の故郷に帰省した里枝は、大祐と再婚しささやかな幸せに送っていたがある日大祐が仕事中の事故で亡くなってしまう。そして夫だと思っていた彼は"谷口大祐"ではなく本名も経歴も分からない謎の男だと発覚する。


大傑作。今作が2023年 日本アカデミー賞最優秀作品賞なのも納得でした。

愛したはずの夫は全くの別人で、その正体・人生を追っていくミステリーの物語導入から、自分を自分だと証明するものは一体何なのだろうという問いを投げかけられる。

本人だと証明するには、名前や身分証・戸籍が必要で、しかしそれもケースバイケースで変わることもある。
そして、親の犯罪歴、、自分とは無関係のはずなのに生まれた場所や血の繋がり・家庭環境によって関係性を結び付けられる。人はある意味孤独にはならない、しかしそれによって一生ついて回る苦しみを呪いのように背負わされることもあるんだ。窪田正孝が演じた男のように自分自身を保てなくなるだろうな。戸籍交換とまでは行かずとも今はSNSで簡単に他人の人生になり済ませられる時代で、自分ではない何かになることによって救われる人は決して少なくないと思う。

そんなことを色々と考えながら今作を見ていたが、鑑賞後は結構尾を引いてしまった。それは特にラストシーンだ。初対面への身の上話でこれ程までにゾッとさせられると同時に虚しく感じてしまう…。現実逃避の一時的救済、しかしこうしてしまう気持ちも理解出来る。ラストシーンのその先も続くであろう彼の人生を想像しては落ち込む。この物語で彼が一番報われない。。