このレビューはネタバレを含みます
【soutaの映画つぶやき No.1081】
"手紙は憶えている"
妻のルースに先立たれ、認知症に物忘れが悪化しているゼヴ。しかし彼には絶対にやらなければいけないことがあった。それはアウシュヴィッツ収容所でゼヴの家族を殺したナチス兵士への復讐だった。
認知症版"メメント"といった感じ。手紙やメモで目的を思い出すこと、自分自身で過去を偽ったがその事さえも忘れてしまった主人公という点。
ゼヴは最初からマックスの指示に従っていただけだった。記憶がないのでゼヴ自身の意志が全く感じられず、これは吹き込まれた偽りの記憶であり偽りの復讐。そしてそれがゼヴ自身の正体が分かった瞬間、これまでの目的である復讐が全て自分自身に返ってくる。
ゼヴの自殺まで計算通りなのかは分からないがある意味完璧な復讐計画ではないのか。しかしマックスの気持ちは決して晴れることはない、この歴史的大罪の悲しみは消えない。オチの衝撃は確かにあるが、それ以上にいたたまれなさと報われなさを感じる。