このレビューはネタバレを含みます
確かにエンタメとしては面白いのだが、何か心に残るかと言われると率直に言って疑問だ。慎ましくさりげない日常の中に生まれるドラマを描いた作品が私にとってはなおさらである。しかし、それは好みの問題に過ぎないから、ここでは本作が何をやろうとしたのか私なりに整理してみようと思う。
本作が取り組んだテーマはサスペンスにとって永遠のテーマとも言える「正義とは何か」だろう。あるいは「愛とは何か」とテーマを立てても良い。「死にたい」と言う人を殺すのは正義なのか。そのように言う人が病気を患い、死を望んだ家族だったとき、その家族を殺すのは愛なのか。もちろんどちらも「否」なんだろうが、私がそのような場面に直面したとき、原田と同じような行動をとる可能性を完全否定できないのが恐ろしい。
そもそも「死にたい」と言う人は本当に死を望んでいるのだろうか。台詞でもあったが本当に死を望んでいる人など1人もおらず、生きることに対する望みを捨てきれないことの裏返しとしてそのようなことを言っているような気がする。あぁ、人間は何と脆いのだろう、、
本音と建前と言うが、もし周りの人の心の叫びが聞こえたらぜひ手を差し伸べたい。たとえ聞こえなかったとしても、聞こうとする姿勢を持ち続けたいものである。
