SUGO6

さがすのSUGO6のレビュー・感想・評価

さがす(2022年製作の映画)
5.0
衝撃的に良かった、、個人的にツボ好きてもはや多分今年邦画no.1ぶっちぎる予感。。

エンターテイメントを突き詰めながらも同時に心に残る問いをしっかりと筋書きに編み込む辺り、監督ご自身がポンジュノ組でのご経験もあるからだろうか、読後感がまさにポンジュノ作品(殺人の追憶、オクジャ、パラサイト等)に通ずるものをビシバシと感じた。(所々しっかりとユーモアを混ぜてくるセンスも○、しかもそれが小ネタも含めた攻めすぎない感じも個人的にはツボ)

テーマ、メッセージとしては冒頭のシーンを主題の提示と捉えると、善悪の境界線みたいな所なのだろうか。(もちろん介護や尊厳死的な部分もある気はするけども。主はこっちな気がした)映画ジョーカーでも描かれたけど、善悪の境目なんてものは本当に曖昧で、ふとした弾みで誰だってダークサイドに陥ることなんてあり得るんだ、と。とはいえ、このお話では、主人公を一概に悪だと断定できない要素もしっかりと担保されていて(後程詳述)そこがまた問いの深さに繋がるし、脚本の優れているところだと思った。

いい脚本とはなんだろうか?という問いに対して、最近聞き知った考え方の一つに遊園地のフリーフォールみたいなものでは?という例えがあって、これが個人的にはすごくしっくり来ている。落ちると思ったらふと浮かび上がるというか、着地するかに見えてそこからまた気持ちを浮揚させられる展開になる、という事なのだが、まさしく本作はそうした所がきっちりとできていて飽きさせない展開になっていた。

演技面では、個人的にコメディ路線しかあまり見たことがなかった佐藤二郎さんの多面的な表情も素晴らしかったと思ったし(妻の介護に献身的な夫、娘の将来を健気に守る父、そして〇〇な男)、なんと言っても娘役の伊東蒼さんがいい。。この方どこかで見たかな?と思ったら湯を沸かすやおかえりモネの印象的な中学生の子か!と。淡々とこなす会話劇から一点感情を激しく、時に静かにぶちまける所も大変良かった。将来性すごく感じるし、調べると所属はユマニテさん。(同じく朝ドラでの活躍も光った蒔田彩珠さんや岸井ゆきのさんなど)いい役者さん揃ってるなぁ、と。※某男性俳優さんの件は本当にお疲れ様です...






⚠️以下ネタバレNGな方はお控えを!!⚠️






●冒頭のシーンのチョイスがまず最高。既にこの時点でごく普通の一般人父が犯行に及んでしまう伏線は薄ーく張ってあったのか、、となったが、冒頭で見せらる時はまだ?でしかなかった。しかも劇中の一番山場のシークエンスのあえてカメラがメインの映像では捉えていない所を別アングル視点としてここで使うのか、という切り取り方。センスめちゃくくちゃ良くない?


●最後の卓球のシーン、良すぎて震えた。卓球の球の行き交いが父娘の探り合い、攻防を表すだけでなく、主人公父に内在し、行き来する善悪を表しているかのようで、そして同時に見るものの鼓動や思想までも問いているようで、家族の絆の一つでもある卓球を使いながらも様々含意しうるものすごく効果的な演出だと思った。(しかもこれお互いこんだけラリー続けながら感情混ぜてセリフを発するってどんだけ大変なんやろ、しかも一発撮りだよね?それも含めてめちゃくちゃ良い)


●上記にも通じるが、自分自身は単純に主人公父を悪だと言い切れない気持ちになった。。介護による心身の疲労は本当に経験したものでないと語れないであろうし、介護される側が死を望むほどの状態になってしまった時、果たして自分は何をすべきなのか、答えが見出せるものなのかと思ってしまう。それほどに辛いものだと思う。  

さらに、そうした妻を頭ではわかっていても、自分の依頼であっても殺した男、さらにそれに留まらず救済という正義を振り翳し死を望む者の命を奪う行為で罪を重ねる男、そんな男の暴走を止めることが、罪に加担した自分をもある種社会的にも正当化する(金銭的目的も果たし、娘も守るという意味で)という状況に追い込まれでもしたら、自らが正義の鉄槌を下すという判断に陥ってしまうことに対して僕らはどれだけ否定的になれるんだろう、とも思ってしまう。いずれにしろ、そんな状況下で思いもよらない決断を下していきながらも、自分自身への戸惑いも含め、色んな感情が内混ぜの表情を呈する佐藤二郎氏の演技は、本当に素晴らしいものだったと思った。

そして最後に兎にも角にも、今作が商業映画長編デビューという片山慎三監督、日本人で唯一のポンジュノ監督の助監督を務められたというご経歴も含め、これから常に追い続けたくなる作品を生み出してくれるかもしれないと思った。(前作、レビュー拝見するにめちゃくちゃ衝撃作なようで見なければ...)いやはや、本当に面白かった。
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