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パワー・オブ・ザ・ドッグのmiiのレビュー・感想・評価

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)
4.3
「障害物」に対しての登場人物の対応が様々。
人は皆たくさんの「障害物」を抱えて生きているけど
そんな悩みを解消するのは至極簡単な事。
それを排除してしまえばいい。
(実際はこんな事 簡単には出来ないけどね)

その嫌悪感から 精神に異常を来たすほどまで病み
障害物を避けようとする母親ローズ。
お金目当ての結婚である事を見透かされているフィルに
恐れを抱いているのかも。

障害物でも近づく強さを持つピーター。
彼は父親のアルコール依存と自死から
自分は絶対にそうはならない!という強さなのかもしれませんね。

ブロンコ・ヘンリーとの関係をひた隠しにしなければならなかったという負い目の反動からなのか
女性と子供 弱者に対して敵対心丸出しで攻撃する兄フィル。
彼の障害物は 避けられない世間一般的という目なのかも。

結婚にフィルが障害物だと分かっていても
平和主義を貫く弟ジョージ。

ここまで書いて一目瞭然。
フィルが皆にとって 邪魔者。

「炭疽症」の伏線もあり
怖いと思ったのが ひょっとしたらジョージはほっとしたのではないか?という事。

フィルが秀才であるにも関わらず
アウトロー的な態度を終始取っていたのは
ゲイである事を隠さねばならない
世間への抵抗からだったのかも···とも考えられたり
登場人物の台詞のない裏の心理を考えるのが
すごく面白い作品だった。

さらには ピーターの練られた「障害物」撃退法が衝撃でした。

人は第一印象で決まる···とはよく言うけれど
そのまんまのフィルと
そうでなかったピーターの秘めた資質にも驚かされた。

「男を強くするのは苦境と忍耐だ」
ブロンコ・ヘンリーの言った言葉そのままであるピーターに
まんまとしてやられたフィルの皮肉よ。

「ピアノレッスン」の脚本も手掛けたジェーン・カンピオン監督。
この繊細な心理描写は なるほど!と思った。
mii

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