構成と演技の巧さ、そして重厚感で言えば、これにアカデミー作品賞がいってもよかったくらいだ。
説明的なシーンが極力、抑えられているのに、登場人物における関係性の変化により緊張感のあるストーリー展開。マッチョイズムを引きずった、主演のベネディクト・カンバーバッチはじめ、キルスティン・ダンストなどの演技も熱い。
そして、テーマ。旧弊な男尊女卑の主人公に、ホモセクシュアルなセクシュアリティも匂わせる。
これは、どうしても想起される作品、中国系のアン・リー監督による「純愛悲恋映画」『ブロークバック・マウンテン』を連想させるが、こちらはよりマッチョな男性を厳しく見ているというか、描いている。
絶対君主のような主人公は、実は切なくて弱い存在でもあるということも描く、ジェーン・カンピオン監督は、老いてなおすばらしい。
『プロミシング・ヤング・ウーマン』を絶賛しているあたりも偉い。
随所に挿入される雄大な自然に対して、どうして人は慣習やそれによる偏見に影響されるのか。