1960年代の中絶が違法のフランスで、望まない妊娠をした大学生のアンヌ。成績優秀で前途洋々な彼女は産まないと決意するが、困難な道のりが待っていた。
2ヶ月前に見た『セイント･フランシス』も主人公が望まない妊娠をし中絶する話だが、時代は中絶が認められている現代のアメリカであり、医療も進歩しインターネットで情報も手に入る。
主人公の葛藤はあるものの大分ポップに描かれていた『セイント・フランシス』に対し、本作はーー時代背景が違うことも大きいがーーとても生々しく、緊迫していて壮絶だった。
女性をありのままの姿で映し出していたのが良い。生理･性交渉･妊娠･出産などを経験した/してないの差で女性同士の間に生じる微妙な序列関係。時に価値観の違いで友情が壊れることもあるが、女性に特有の痛みや苦しみを分かち合おうとする結束力はいつの時代も変わらないのだと思う。
「女性に選択肢がない」時代に、犯罪行為だと言われながら、自らの命まで危険にさらし、産まないという道に突き進んだアンヌ。日にちが経つにつれ、どんどん追い詰められ、周囲からも孤立していく姿を見て苦しくなった。精神的にも肉体的にも傷つけられた彼女が選び取った未来はどんなものになったのだろうか。
